研究課題
メダカの骨芽細胞特異的Osterixプロモータの下流にマウスFra1-T2A-EGFPをつないだトランスジーンを作製し、マイクロインジェクションによりFra-1 メダカ (初代F0)を得た。その中からトランスジーンが生殖系列に移行する(第一世代 F1)メダカを得た。この中でEGFP の蛍光強度が比較的強いもの(つまりFra1の発現が高いもの)を選択し、野生型メダカと交配させF2を得た。同じ受精日および同じ孵化日のメダカを、対照群とFra-1 メダカで経時的に比較した。【Fra-1 メダカの発現確認】Fra-1 メダカは、孵化し泳ぎだす前の受精卵の段階でGFP 陽性となった。すなわち、受精後3-4 日でEGFP 陽性卵が観察でき、受精後およそ8日後に孵化した。そこで、この孵化直後の対照メダカおよびFra-1 メダカを回収し、定量RT-PCR および、ウエスタンブロット法にてマウスFra-1 の発現を確認した。【Fra-1 のメダカ骨格形態への影響の解析】全身性にFra-1 を発現するFra-1 マウスは、成長過程で進行性の骨形態異常を示す。そこで、メダカの骨をAlizarin complexoneを用いて生体染色し、メダカ骨格の形態学的異常の有無を探索したところ、形態異常は認められず、石灰化の低下が観察された。そこで小動物用マイクロCT 装置を用いて、メダカの全身の骨格を撮像したところ、形態学的異常がないこと、石灰化が低下していることが確認された。以上のデータから、メダカにおいて骨芽細胞特異的にFra-1を強制発現すると骨の石灰化が低下することが示された。
2: おおむね順調に進展している
Fra-1トランスジェニックメダカの作出ができたことで、順調に進展していると言える。また、低石灰化という表現形質も、さらに解析する余地があるものの、alizarin染色とマイクロCTの両方で確認されたことから、研究を先に進める基盤ができたと考える。
まず、石灰化の低下という表現形質を、発生段階において、von Kossa 法でカルシウムを染色するなどして、組織学的にも証明する。また、電子顕微鏡を用いて、石灰化の過程を解像度を上げて解析するなどして、現象論として精度の高い記述ができるようにする。 その上で、遺伝子発現の解析を行い、石灰化低下のメカニズムを明らかにする。matrix Gla protein(MGP)は、石灰化の阻害因子であり、この発現が上昇している可能性がある(Eferl et al, 2008, EMBO J)。この既存の考え方を超えられるかどうか検討する。骨芽細胞特異的Fra-1の強制発現を、メダカに加えてマウスで行い、骨の表現形質を比較解析できないかどうかを検討したい。
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の組織学的解析における特殊染色(von Kossa染色など)や電子顕微鏡による解析を行うために経費を使用する。さらに遺伝子発現の解析を定量RT-PCRによって行う。メダカのマイクロアレイ(4x44K, Agilent)がカスタムアレイとして導入し、網羅的解析を行いたい。
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