研究課題/領域番号 |
24659687
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研究機関 | 藤田保健衛生大学 |
研究代表者 |
上住 聡芳 藤田保健衛生大学, 総合医科学研究所, 助教 (60434594)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 異所性骨細胞 |
研究概要 |
骨格筋に存在する2種類の前駆細胞、筋衛星細胞と間葉系前駆細胞(MPC)、が進行性骨化性線維異形成症(FOP)で見られる異所性骨細胞の起源となり得るか調べるため、筋衛星細胞およびMPCを特異的に標識するマウスの作成を試みた。筋衛星細胞のマーカーであるPax7の制御下でCreER(T2)を発現するマウス(Pax7-CreER(T2))およびMPCのマーカーであるPDGFRαの制御下でCreER(T2)を発現するマウス(PDGFRα-CreER(T2))とレポーターマウス(R26R-EYFP)を交配し、タモキシフェン投与により組換え(EYFPの発現)を誘導した。Pax7-CreER(T2)/R26R-EYFPマウスでは既に報告されているように高効率に筋衛星細胞特異的なEYFPの発現が確認できたが、PDGFRα-CreER(T2)/R26R-EYFPマウスではMPCの1%程度にしかEYFPの発現が見られず、PDGFRα-CreER(T2)マウスによるMPCでの組換え効率が非常に低いことが明らかになった。また、in vivoエレクトロポレーションによって変異ALK-2発現プラスミドを骨格筋へ導入したが、異所性骨化は認められず、前駆細胞への導入効率が悪いことが示唆された。一方、ヒト骨格筋由来前駆細胞を用いた研究では進展が見られた。免疫不全マウスの皮下にPLGA-ハイドロキシアパタイトの足場とともに細胞移植する骨形成モデルを利用し、ヒト筋衛星細胞とヒトMPCのin vivo骨形成能を調べた。その結果、ヒトMPCはin vivoで高い骨形成能を示したが、ヒト筋衛星細胞は骨組織を形成することができなかった。これらから異所性骨細胞の起源は筋衛星細胞ではなくMPCであることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスを用いた研究計画は、PDGFRα-CreER(T2)マウスによるMPCでの組換え効率の低さ、in vivoエレクトロポレーションによる前駆細胞への導入効率の低さが問題となり難航した。しかし、ヒト骨格筋において2種類の前駆細胞を同定し、ヒトMPCのin vivoでの高い骨形成能を示すことに成功した。一方、ヒト筋衛星細胞はin vivoの骨形成能がないことも明らかにできた。ヒト細胞を用いた研究が大きく進展したことは臨床的に非常に意義が大きい。異所性骨細胞の起源であることが示唆されたヒトMPCを用いれば、今後の研究をさらに発展させることができると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
PDGFRα-CreER(T2)マウスによるMPCでの組換え効率の低さの問題から、遺伝子改変マウスを利用した研究計画を見直すことにした。代わりに大きな進展のあったヒト骨格筋由来MPCを活用した研究を実施することとした。昨年度は皮下移植によるin vivo骨形成モデルを用いたが、今年度はよりFOPに関連性の深い実験系により、ヒトMPCの異所性骨細胞の起源としての重要性を検証する。 まず、変異ALK-2とVenusを発現するレンチウイルスベクターを作製する。作製されたレンチウイルスベクターをヒトMPCに感染させ、変異ALK-2を導入する。免疫不全マウスに筋損傷を与え、変異ALK-2導入ヒトMPCを移植し、異所性骨分化が誘導されるか調べる。異所性骨化が確認されれば、Venusの蛍光を指標として経時的に異所性骨分化過程のヒトMPCを単離し、マイクロアレイ解析によって異所性骨分化の分子機構を精査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変マウスを利用した研究計画を変更し、ヒトMPCに変異ALK-2発現レンチウイルスベクターを感染させ、免疫不全マウスの骨格筋に移植することで、FOPで見られる異所性骨細胞の起源としてのヒトMPCの重要性を検証する研究を行う。そのための研究費の使用計画は以下である。 物品費:レンチウイルス作製、ヒト細胞培養関連、動物実験関連、マイクロアレイ解析 旅費:研究成果発表のために国内学会参加
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