研究概要 |
骨格筋に存在する2種類の前駆細胞、筋衛星細胞と間葉系前駆細胞(MPC)、が進行性骨化性線維異形成症(FOP)で見られる異所性骨細胞の起源となり得るか調べる目的で研究を行った。前年度においてヒト骨格筋からMPCの単離に成功し、その高い骨分化能を証明したが(Oishi et al., Plos One, 2013)、今年度はヒト骨格筋由来MPCの特性をさらに詳細に調べた。ヒトMPCはヒト筋衛星細胞に比べ高い間葉系への分化能(脂肪、骨、線維芽細胞分化)を有しているが、骨格筋細胞への分化能は筋衛星細胞にのみ見られた。筋疾患患者の骨格筋を精査したところ、ヒトMPCが骨格筋の脂肪化や線維化といった病態に寄与していることが示された。また、MPCのマーカーであるPDGFRαは単にマーカーとして重要なだけでなく、PDGFRαシグナルはMPCの増殖を促進することが明らかとなり、MPCの動態を制御する重要な分子であることが示唆された。これらのヒトMPCの特性について論文発表を行った(Uezumi et al., Cell Death Dis, 2014)。 ヒトMPCのFOP病態への関連をさらに追究するため、変異ALK-2とVenusを発現するレンチウイルスベクターを作製した。作製されたレンチウイルスベクターを用いてヒトMPCへ変異ALK-2を高効率に導入することに成功した。そこで変異ALK-2導入ヒトMPCを免疫不全マウスに移植したところ、骨様組織の形成が確認された。 以上から、MPCがヒトの筋疾患に関与していることが明らかとなり、ヒトMPCを用いた研究をさらに推進することで筋疾患に対する効率の良い治療法開発につながると考えられた。
|