研究課題
正に電荷した局所麻酔薬(QX-314)による止痒効果とその機序および副作用を明らかにするために研究を行った.平成24年度は行動研究と電気生理学的研究を実施した.痒みモデルマウスは抗腫瘍薬であるイミキモドを,雄性C57BL/6マウス(5-6週令,24-28g)頸部皮膚に局所投与することにより作成した.対照マウスには溶媒のみ局所投与した.痒み関連行動は単位時間当たりの”引っ掻き行動”に費やす時間と回数で評価した.イミキモドの皮下投与により”引っ掻き行動”が惹起された.イミキモド投与15分後をピークとして30分間”引っ掻き行動”が観察された.溶媒投与では”引っ掻き行動”は観察されなかった.次にイミキモドの”引っ掻き行動”におけるTRPV1の関与を調べた.”引っ掻き行動”に費やす時間と回数は野生型マウスに比べTRPV1遺伝子欠損マウスで減少した.また,カプサイシンのくも膜下投与によって作成したTRPV1神経脱落マウスでも対照マウスに比較して”引っ掻き行動”に費やす時間と回数が減少した.これらの結果により,イミキモドによる”引っ掻き行動”発現にはTRPV1活性化が関与していることが明らかとなった.さらに,QX-314の効果を調べた.イミキモドによる”引っ掻き行動”はQX-314の前投与により抑制された.次に全身麻酔下にマウスを脊椎定位固定器に装着し,脊髄単一細胞外電位記録を行い,イミキモドの作用とQX-314の抑制効果について電気生理学的に解析した.イミキモド投与により脊髄後角細胞での活動電位発射頻度が増加した.この増加はQX-314の前処置により抑制された.
2: おおむね順調に進展している
交付申請書では平成24年度の実施計画は痒みモデルの確立と行動評価,電気生理学的評価であった.痒みモデルはイミキモドによるモデルは確立し,イミキモド痒みモデルの基本的な行動評価法を確立した.さらに,遺伝子改変動物や薬物を用いた機序に関する研究も順調に終了した.さらに,QX-314の行動学的評価と電気生理学的評価も順調に達成されており,イミキモドの痒みに対するQX-314の効果に関する研究は当初の計画以上に進展している.しかしながら,ヒスタミン・セロトニンによる痒みモデルの確立は遅れているが,本研究の主目的がイミキモド痒みモデルの解析であること,また,評価系がイミキモドモデルの解析で確立されているためヒスタミン・セロトニンによる痒みモデル解析に難しい点はないと考えられる.イミキモドモデルの解析が計画以上に進展している点を考慮し,おおむね順調に進展していると評価した.
イミキモド痒みモデルを用いた実験は順調に進んでいる.ヒスタミン・セロトニンによる痒みモデルの実験は遅れている.しかし,イミキモド痒みモデル実験で研究手法・評価法は確立しているため,研究協力者を加えて,今年度中にヒスタミン・セロトニンによる痒みモデルの研究の遅れを取り戻す.さらに平成25年度は,イミキモドによるTRPV1陽性神経の活性化とそれに対するQX-314の抑制効果をリン酸化CREBをマーカーとして免疫組織学的に評価する.
昨年度,海外短期出張期間があったため,ヒスタミン・セロトニンによる痒み研究が遅れたため,平成24年度研究費が一部未使用となった.そこで,平成25年度では,平成24年度予定であったヒスタミン・セロトニンによる痒み研究を合わせて行う予定である.当初の平成25年度研究計画分と平成24年度予定であったヒスタミン・セロトニンによる痒み研究合わせて,実験動物(C57B6マウス,およびTRPV1遺伝子欠損マウス),電気整理学的研究消耗品(電極),免疫組織科学用試薬(1次抗体,2次抗体)に研究費を使用する予定である.
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