今年度は痛みの客観的評価法を目指して2つの研究の方針で行った。 1つは、パルスオキシメーターを用いて末梢循環の変化を評価することで侵害受容を評価した。その結果、健康被験者で若年男性と若年女性、高齢男性ではその指標が有用であることが明らかになったが、高齢女性では明らかでなかった。この結果はヨーロッパ疼痛学会で優秀演題候補に選出され、発表を行った後、Journal of Pain Researchに論文提出し、アクセプトされた。さらに、鎮静下で健康被験者に対して痛み刺激を与えたときに、その主観的な痛みの変化と末梢循環の変化の関係を調べる研究を行った。その結果、鎮静下では必ずしも痛みの主観的な評価と末梢循環指標の変化がパラレルではないことが明らかになった。この知見は2014年の日本疼痛学会で発表予定である。 もう1つは、脳波を用いて痛みの評価を行う試みを行った。昨年度は刺激のパターンを熱刺激を中心に行ったが、今年度は電気刺激によるAbeta刺激による変化を元に痛みの客観的評価アルゴリズムの開発を試みた。若年男性に絞った解析では、脳波の変化による指標XとYを用い、その有用率の評価を15名で行ったところ小さな痛みとひどい痛みの差を80%、小さな痛みと中等度の痛みを90%くらいの判別率で区別する事が出来た。しかし、高齢者にでは若年者と脳波の特徴が異なり、判別が困難であった。さらに鎮静下ではその判別が困難な問題があった。今後は指標Zを開発できる見込みがあり、鎮静下や高齢男性にも適用できる変化を抽出し、さらに正確な判定指標を開発していける見通しを立てる事が出来た。
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