研究課題/領域番号 |
24659699
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
北岡 智子 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (80243822)
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研究分担者 |
横山 正尚 高知大学, 医歯学系, 教授 (20158380)
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キーワード | 認知機能 / 術後 / 麻酔薬 / リハビリテーション |
研究概要 |
本研究の主眼は、周術期因子、特に麻酔法の違いが認知機能に影響するかを検討し、より安全な麻酔法を確立するものである。動物実験で基礎研究を実施し、そのメカニズムを解析するとともに、ヒトでの認知機能検査に新方法(CogHealth解析)を活用し、動物とヒトの差異についても検討する。 昨年度、麻酔暴露のみではみられなかった認知機能の低下が、手術操作を加えることで明らかになること、また術後痛を鎮痛処置で抑えることで認知機能の低下も抑制できることが判明し、認知機能の低下に術後痛が関係していることが明らかとなった。 本年度の当初の予定はラットの認知機能に与える機序の解明であった。そこで、術後モデルのラットを用い、脳レベルでの様々な物質の変化を測定した。特に脳におけるN-methyl-d-aspartate:NMDAの系を介して術後認知機能障害が発現している可能性を報告した(Postoperative pain impairs subsequent performance on a spatial memory task via effects on N-methyl-d-aspartate receptor in aged rats. Life Sci.2013)。さらに脳での炎症反応が認知機能障害に影響を及ぼしている可能性を報告し、その炎症反応を抑制することで、認知機能を保持できる可能性も報告した(術後認知機能障害における炎症性サイトカインの役割 -ラット術後痛モデルを用いて-.第17回日本神経麻酔・集中治療研究会.2013)。それらの内容をシンポジウムでまとめて発表した(創傷治癒過程での中枢神経の変化 ー術後痛と認知機能の関係ー 日本麻酔科学会第60回学術集会 2013)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の当初の計画はラットの認知機能に与える機序の解明であり、以下のごとくであった。 すなわち、麻酔により認知機能に影響を受けた群と受けない群で、その差異を検討し、認知機能に及ぼす機序の解明を遂行する予定であった。具体的には、麻酔薬の脳の(1)アポトーシスへの影響、(2)βアミロイドの発現、(3)脳におけるその他の組織的な変化を検索する予定であったが、すでに前年度の研究で、認知機能障害は麻酔薬そのものの影響はほぼなく、術後痛の影響が大きく作用していることが判明した。そこで、麻酔薬の影響を想定した(1)および(2)の影響はないと判断し、術後痛に関連した認知機能障害物質の変化の的を絞り、本年度の研究を実施した。 上記の結果を受け、特に脳におけるN-methyl-d-aspartate:NMDAの系を介して術後認知機能障害が発現している可能性を報告した。さらに脳での炎症反応が認知機能障害に影響を及ぼしている可能性を報告し、その炎症反応を抑制することで、認知機能を保持できる可能性も報告した。上記結果は論文化し、多くの国内外の学会で発表し、シンポジウムでもまとめて発表した。以上のごとく、本研究は当初計画より進んだ状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の主な研究は、ヒトにおける術後認知機能障害を予防する周術期管理の検討である。今までの研究で、麻酔薬そのものにはラットでは大きな認知機能障害を惹起する可能性は少なく、術後痛が重要な因子であることが判明した。さらに、脳レベルでの炎症反応の予防が術後認知機能障害を予防する可能性が示唆された。最終年度では、さらに動物における術後認知機能の障害のメカニズムを詳しく調べるとともに、ヒトにおける認知機能障害の予防に向けた研究を前進させる。 研究資金はほぼ、予算通りの執行で前年度の繰り越しもない。本年度も予定通りの執行を見込んである。
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