研究課題/領域番号 |
24659705
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
南嶋 しづか 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20622088)
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研究分担者 |
南嶋 洋司 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20593966)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 低酸素応答 / 心肺蘇生 |
研究概要 |
心停止(CA)/心肺蘇生(CPR)後の死亡率は依然として高く、低体温療法以外に有効な治療法はない。我々は、一酸化窒素(NO)がCA/CPR後の予後を改善することを明らかにした。近年、虚血や低酸素環境下におけるNOと低酸素応答を制御する転写因子HIF(hypoxia-inducible factor)の相互作用が注目されていることから、我々は、HIFの活性化は蘇生後の予後改善に有効で、低酸素応答をターゲットとした新しい心停止後症候群の治療法開発へと展開できるのではないかと考えた。 HIFの活性化はプロリン水酸化酵素PHD(PHD1-3)のうち主にPHD2によって負に制御されている。本研究は、HIFが恒常的に活性化した雄のTamoxifen誘導型PHD2コンディショナルノックアウト(PHD2 cKO)マウスと対照群を用い、CA/CPRモデルを作製し、HIFの活性化がCPRに有効である事を確認し、その分子メカニズムの解明を目指す。 体温を37度に維持したマウスに9分間のCA後、手指による胸部圧迫と機械換気による心肺蘇生を施行し、CPR開始後30分に抜管した。CA/CPR後のマウスの生存率を比較するとともに、我々が以前報告した神経学的機能スコアリングシステムを用いて中枢神経機能を評価した。CA/CPR後の生存率や中枢神経機能において、PHD2 cKO群が対照群に比較して改善している傾向はあるものの、有意な差は未だ得られていない。 今後、HIFの活性化がCPRに有効であることをより明確にするため、CA/CPR後の心臓機能をマウス用コンダクタンスカテーテルを用いて評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において必須の機器であるデータ集積・解析システムや付属品はアメリカからの輸入品で、発注から納入までに約3ヶ月を要したため実験開始が遅れた。また、新たな実験環境に対する実験プロトコールの修正(特に心停止時間の調整)が必要であり、C57BL/6雄マウスを用いた予備実験を行ったため本実験開始が遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において、我々はC57BL/6雄マウスを用いた心肺蘇生後のNO吸入によるHIFの活性化の証明を計画していた。この実験にはNO濃度検出器を含めたNO吸入システムが必要であるが、市販されているNOガス・医療機器は高価で購入はほぼ不可能である。このため、医療機器メーカーに対し実験使用のための貸与の申し込みを行ったが同意を得られなかった。 この対応策として、培養細胞とNO供与体を用い低酸素環境とNO吸入を模倣したin vitro実験を実施する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の実験試薬や抗体などの購入に充てる予定である。
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