研究課題
心肺蘇生(CPR)後の死亡率は依然として高く、全身性の虚血再灌流障害に起因する心停止後症候群(心停止後の循環不全や神経学的機能不全、敗血症様の炎症)がその原因の一つであるといわれている。我々は一酸化窒素(NO)が心停止(CA)/CPR後の予後を改善することを明らかにしたもののそのメカニズムは不明であった。近年、低酸素環境下におけるNOと低酸素に対する低酸素応答を制御する転写因子HIF(hypoxia-inducible factor)の相互作用が注目されている。我々は、NOによる蘇生後の予後改善のメカニズムの一つとしてHIFの活性化が関与しており、HIFの活性化はCPR後の虚血再灌流傷害に起因する心停止後症候群を軽減し、生存率や神経学的予後を改善するのではないかと考えた。HIFの転写活性はプロリン水酸化酵素PHD (PHD1~3)のうち主にPHD2によって負に制御されている。本研究では、PHD2を破壊しHIFを活性化させたマウス(タモキシフェン投与によってPHD2遺伝子を全身で破壊できるコンディショナルノックアウト)を用いたCA/CPRモデルにおいて、HIFの活性化が心停止後症候群を軽減し、生存率や神経学的予後を改善するかを検証した。タモキシフェンを投与しHIFを活性化させたマウスとその対照群にCA/CPRを試行し、生存率や心機能、神経学的機能を比較したが、HIFの活性化はCA/CPR後の予後を改善しなかった。また、CA/CPR後にタモキシフェンを投与しHIFを活性化させたマウスを用いた実験においても予後改善は認められなかった。
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Anesthesia & Analgesia
巻: 120 ページ: 印刷中
10.1213/ANE0000000000000694