我々は、本助成を用いてラット及び砂ネズミにおいて、簡便に頭蓋外から脳波導出し既存のBISモニタ装置に連結可能なデバイスを作製した。熱可塑性ポリエステルであるPET(ポリエチレンテレフタレート)を用い、両翼に5mm長のステンレス製針電極(直径0.5mm)4本を持つ形状を様々に変更し最適な脳波波形を取得する目的で、単極電極を用いて電極間距離を様々に変更し、また取得電極ベクトルを考慮して種々の組み合わせパタンで解析を行ない作製、改良した上記デバイスを用いた実験(1)(2)から得られた知見は以下の通り。 (1)吸入麻酔濃度に対する追従性及び侵害刺激に対する反応について 1.今回開発したデバイスは、両側で同期したEEG原波形をBISモニタ上に導出しかつBIS諸値を表示可能であった。2.BIS値は吸入麻酔濃度増加に対してS字状に減少するパターンを示した。3.BSR値は吸入麻酔濃度増加に対してS字状に上昇するパターンを示した。4.SEF値は吸入麻酔濃度増加に対して徐々に減少するパターンを示した。5.亜酸化窒素付加に対する反応は、速波化した後に徐波化する2相性のパターンを示した。6.吸入麻酔中、高濃度においては動脈圧変化を示すのみで、吸入麻酔濃度が低くなると動脈圧変化に加えてBIS値の有意な上昇が認められた。 (2)脳健常性モニタリングの可能性-脳低酸素に対する反応について- 1.全脳低酸素に対する脳波変化を速やかに捉えBIS値は0となった。2.局所脳虚血中のBIS値は、何れのセボフルレン濃度においても虚血側は健常側に比較して低いBIS値を示した。3.局所脳虚血中のBIS値は、電極の位置によっては虚血を捉えられない可能性があった。
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