研究課題
腎細胞癌(RCC)は全腎悪性腫瘍の約85%を占め、経年的に増加傾向を示している。初診時に約25%の症例が遠隔転移を有し、また、根治的腎摘除術を施行し得た場合でも約20%の症例で再発を認める。遠隔転移を有する症例では抗VEGF療法を中心とした治療が行われるがCRが得られる事は稀である。また、PRが得られた症例の殆が同療法に対する治療抵抗性を獲得するため、罹患例の約1/3が死亡に至る予後不良な疾患である。本邦の2005年データーでは年間新規患者数が1.8万人、6132人が癌死している。また、全世界では2006年に209,000人が罹患し102,000人が癌死したと報告(Rini et al. Lancet 2009)されており新規治療薬の開発が急務である。従って、 本研究において発癌機構に基づいた新規治療標的の同定を行う。RCCは、その70-80%の症例でVHL遺伝子変異を認めることが知られている。我々は、RCC細胞株のプロテオーム解析によりpVHLで制御される新規分子としてclusterinを同定した。同分子はVHL遺伝子欠失に伴い発現が現弱する分子の一つとして、我々が報告を行ったが、実際のヒトRCC組織においてもが確認されていることより、腫瘍抑制機能を有していることが想定されている。上記の背景に基づいて、本年度は実験で使用する新規細胞株の樹立、及び、plasmidの構築を中心に行ってきた。
2: おおむね順調に進展している
これらの実験結果からVHL遺伝子欠失細胞においてclusterin発現を増強させる分子が治療標的分子、及び、VHL欠失にantagonizeする表現系(Revertant)をもたらす分子になり得ると想定される。上記の分子の探索を目的にclusterinのPromoter 領域のクローニングを行い、同分子の発現亢進に伴い786-O (VHL-/-) 細胞が薬剤耐性を獲得するスクリーニング系を樹立することに成功した。
786-O (VHL-/-) 細胞より樹立されたCCL14細胞は、clusterinの発現亢進に伴い薬剤耐性を獲得する。同細胞にLenti-viral shRNA library をInfectionしBlastcidineにてPositive selectionを行ったところ、約80クローンをpick upすることに成功した。今後は各クローンよりgenomic DNAを抽出しPCR法にてgenomeにIntegrateされたshRNA fragmentを回収しBlast Searchにより候補遺伝子を特定する。Off target効果を否定するために同定された分子に対する別のshRNAを作成し、clusterinの発現を亢進させる効果の確認、及び、786-O細胞に対する増殖抑制能を示すかどうか、併せて検討を行う。また、同様の傾向がA498(VHL-/-)細胞においても認められるか検討を行う。
次年度は上記の実験を行うが、この場合、ミニプレップ、PCR、シークエンス、shRNA plasmid作成などのDNA関連実験試薬の購入、及び、外注に約50万円、Western Blotや組織免疫染色など蛋白関連に約30万円、マウスを用いたxenograft modelの作成などin vivo関連に40万円、それぞれ使用する予定である。
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Oncogene
巻: 32 ページ: 894-902
10.1038/onc.2012.101.
巻: 103 ページ: 2027-2037
巻: 31 ページ: 3098-110