研究課題
挑戦的萌芽研究
我々は、死体腎臓移植グラフトの適切な保存方法を探索する過程で、両側腎摘のラットに1時間までの常温虚血腎臓は正着し機能するが、2時間の常温虚血腎臓を移植したラットは移植後5日以内に死亡することを見出していた。常温虚血1時間後に移植した腎臓と2時間後に移植した腎臓を、移植後2日目で取り出して、病理所見を比較したところ、常温虚血2時間後に移植した腎臓では、髄質inner stripeに赤血球塊の沈着していたが、常温虚血1時間後に移植した腎臓には赤血球塊は認められなかった。ところが、腎移植直前の組織では、常温虚血1時間、2時間の腎臓ですでに髄質inner stripeに赤血球塊の沈着が認められた。この、髄質inner stripe赤血球塊の沈着が、何故常温虚血2時間の腎臓では移植後も遷延するのか、我々はfMRIを用いて検討した。この検討において、BOLD MRIにおいてラット死亡腎臓における髄質inner stripeにおける赤血球塊の沈着を検出する事に成功した。続いて、Diffusion MRIを用いて、心停止後2時間後の髄質outer stripeで細胞内浮腫、inner stripeで間質浮腫を検出する事に成功。これら2種類の浮腫が赤血球塊沈着を腎移植後も遷延させる原因となっている可能性があり、これらの所見をMRIで検出する事によって、死体腎グラフトの移植後の予後予測の可能性を示した。また、拡散MRIによる、より包括的に組織中浮腫の存在を評価出来る事が判明した。 このようにして、我々は、fMRIを用いて、ラット死体腎の髄質inner stripeにおける赤血球塊の沈着(red cell congestion)が腎移植後も遷延し、結果的にgraft failureになる事を、移植前の腎臓graftをfMRIで測定することによって、予測できる事を見出した。
2: おおむね順調に進展している
最初の研究で、fMRIの撮影、解析法に慣れ、論文を作成して、publish出来た。
本研究では、今までの経験を生かし、マウス一側尿細管結紮モデル腎臓及びKK/Ta-Akita糖尿病性腎症モデルを用いて、T1,T2強調MRI、BOLD MRI、拡散MRI、DT MRI、q space MRI、T1MRIの中で、腎臓線維化を最も正確に非侵襲的に定量出来るMRIの撮影方法を探索する。また、複数のMRI撮影方法を組み合わせて、より正確な腎臓線維化の測定する方法も検討する。このようにして得られた、腎臓線維化の非侵襲的な測定方法を最終的には、定期的な腎生検を行う、腎臓移植レシピエント患者で測定を行い、ヒトの測定に当てはめる事が出来るか検討を行う。
ラット及びマウスの腎臓MRI撮影
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
PLOS ONE
巻: Volume 8 | Issue 5 | ページ: e63573