多彩な薬剤耐性菌の出現が社会的問題となっている。従来の日和見病原細菌、院内感染のみならず市中感染に おける病原菌の薬剤耐性化は今後さらに治療戦略上大きな問題となることが危惧されている。本研究では薬剤耐 性遺伝子がどのように形成され、どのように拡散していくのかを理解することを目的とした。 咽頭由来ナイセリア属菌に存在する薬剤耐性遺伝子データベースの構築:協力STIクリニックにおいて 菌種同定および薬剤感受性試験を行い、それらの結果を整理した。アジスロマイシンおよびセフトリアキソン耐性菌の存在を示した。さらに、セフトリアキソン耐性遺伝子の同定を行い、セフトリアキソン耐性淋菌H041のpenA遺伝子との比較検討から、セフトリアキソン耐性に必要なアミノ酸置換を推定した。感受性淋菌株の自然形質転換を利用したPCR産物導入実験を行い、上記のセフトリアキソン耐性遺伝子が耐性に関与していることを示した。セフトリアキソン耐性遺伝子の定量的PCR法(TaqManプローブ法)を開発し、実際の咽頭由来菌株に関して使用した。H041型のpenA遺伝子を特異的に増幅可能だが、常在ナイセリア属細菌のセフトリアキソン耐性に関与するpenA遺伝子の検出は出来ないことが示された。アジスロマイシン耐性遺伝子の同定を試みたが、見いだすことができなかった。 連携研究者である保科クリニックにおいて、淋菌感染症患者のセフトリアキソン投与における口腔内非病原性ナイセリア属菌におけるセフトリアキソン耐性菌(低感受性菌)の選択が行なわれるか検討を行なったが、短期間において耐性菌の増加は認められなかった。
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