研究課題/領域番号 |
24659721
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
佐藤 直樹 秋田大学, 医学部, 講師 (40447199)
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キーワード | コンプライアンス定数 / 子宮奇形の形成術 / 子宮筋腫核出術 / 流早産予防 |
研究概要 |
本研究の目的は、内腔で胎児を育む機能を有する子宮という管腔臓器の、「膨らむ能力」すなわち子宮弾性コンプライアンスを客観的・定量的に評価しうるシステム構築への萌芽的挑戦である。子宮弾性コンプライアンス定数は、子宮奇形の形成術や子宮筋腫摘出術などの手術適応判断などで生殖医学領域において、また、流早産予防などの周産期医学の領域においても、生殖臓器としての子宮機能評価として新規のパラメーターとなることが期待されている。 既に婦人科手術時に摘出した子宮を展開して、子宮壁局所の弾性コンプライアンス測定を重ねている。さらに子宮壁を占拠する病変(子宮筋腫、子宮腺筋症等)が壁局所の伸展性に与える影響を定量的に検討し、弾性コンプライアンス定数算出の理論式候補を複数作成した。 次に子宮全体のコンプライアンス定数を測定しうる、圧トランスデューサー付きの測定系を開発中である。更には、経腟超音波3D診断装置による加圧時バルーンの形態を解析する計画に向けての準備段階である。 以上により、①子宮全体 ②子宮局所 の弾性コンプライアンス定数の把握が、将来的は非侵襲的・定量的に可能となる展望である。それらを、腹腔鏡施術時に算出しておき、その後の妊孕能を追跡する。子宮筋腫あるいは腺筋症核出術前後にも弾性コンプライアンス定数を計測し、その後の妊孕性や妊娠予後を追跡・解析する。最終的には、臨床的意義を追求して幅広い臨床活用を目指してゆく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
手術理由や子宮病変が多様かつ有限であるため、測定や患者同意の取得に困難を伴う場合があるが、測定の技術向上とデータの蓄積による傾向把握を得ており、研究効率は改善をみている。基盤データは着実に蓄積されており、解析に供している。子宮弾性コンプライアンスの測定を重ね、定数算出式の候補抽出も行った。現在は、研究対象を積み重ねつつ、影響因子の解析と術後変化の経時的観察を継続している。経時的な観察と予後調査は術後12ヶ月以上に及ぶ見込みであり、また、妊孕性評価や妊娠予後の解析については妊娠・出産時期が予想し難い。研究期間を延長しより明確な結果と結論を目指して取り組んでゆく。
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今後の研究の推進方策 |
限られた条件の研究対象を慎重に積み重ね、経時的な術後評価と影響因子解析、コンプライアンス定数算出式の検証を次年度に継続する方針である。開発中の圧トランスデューサー付き子宮コンプライアンス測定系(装置)は臨床応用を目指して、精度向上と臨床的意義付けに取り組んでいる。将来において、経腟超音波3D診断装置による加圧時バルーンの形態を解析する計画である。超音波診断装置の特性を活かし、低侵襲・低コストでありながらも治療適応や診断を導き得る新しい機能診断システムとして、実臨床への活用を目指してゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
手術理由や子宮病変が多様かつ有限であるため、測定や患者同意の取得に困難をきたしたため 研究期間を延長して移行した研究費の未使用分は研究継続の実費、及び知見収集や成果発表の経費として運用してゆきたい。開発中の圧トランスデューサー付き子宮コンプライアンス測定系(装置)は、今後も改良と調整を重ねる必要があり、機械工学的な技術支援を得るために研究費の一部を活用させていたく可能性がある。
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