現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌細胞の接着能、浸潤能が有意に低下することをin vitroの実験系で証明した。すなわち、低酸素刺激でその発現が低下するmiR-199a-3pに対する分子標的治療が卵巣癌の腹膜播種に対して有効な治療法になる可能性をin vitroでは証明できた。 卵巣癌の幹細胞を確立する研究計画では、当初は、卵巣がん細胞株に Yamanaka factor (Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc)を導入することで、卵巣癌人工多能性癌幹細胞(iPC)を樹立する計画であったが、ハニカム膜上で卵巣癌細胞を培養することにより、癌細胞が幹細胞の性質持つようになる可能性が示唆された。卵巣がん幹細胞に特異的な細胞表面抗原を同定し、flowcytometryを用いて癌幹細胞を分離する方法や卵巣がん患者検体から、組織を採取し、stem cell culture medium (Cancer Res 2008)で培養後、浮遊細胞を分離する方法で、卵巣がん幹細胞を樹立するといったような従来の方法に比較して、ハニカム膜を用いる方法は、純度の高い癌幹細胞を大量に培養できる可能性がある。今後の研究で、ハニカム膜上で培養した細胞が、幹細胞の性質を持っているのであれば、本研究は、著しく進展していくと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は卵巣癌細胞に対するmiR-199a-3p導入療法が卵巣癌の腹膜播種をIn vivoで抑制するか否かを腹膜播種モデルマウスで検討する。さらにハニカム膜上で培養することにより、粘液性腺癌由来卵巣癌細胞株Caov3と明細胞腺癌由来細胞株TOV21Gで細胞増殖抑制効果を認めた。今後の実験は上記2細胞をハニカム膜上で培養し、次の実験を行う。(1)幹細胞の形態的特徴であるsphereの形成があるか否かを走査電子顕微鏡で確認する。(2)actinまたはphospho-FAK(focal-adhesion kinase)抗体を用いて細胞骨格、細胞接着の変化を検討する。(3)sphere形成を認めた細胞を回収し、幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc, BMI1, nestin, ABCG2)の発現状況をreal-time PCRとimmunoblotで確認する。(4)樹立した卵巣癌幹細胞の生物学的特性を検討する。卵巣癌幹細胞の遺伝子発現をマイクロアレイで解析する。解析を行う遺伝子は、①細胞表面抗原(CD44, CD117, CD133など)、②サイトカイン(インターロイキン(IL), 腫瘍壊死因子(TNF), 上皮成長因子(EGF), インスリン様成長因子(IGF), 血小板由来増殖因子(PDGF), 血管内皮細胞増殖因子(VEGF), ケモカイン受容体CXCR2,CXCR3のリガンド(GRO, IP-10)など)③タンパク (GTP結合タンパク質であるRas, 増殖因子シグナルのmitogen-activated protein kinase (MAPK), 生存因子シグナルのAkt、非受容体型チロシンキナーゼであるSrc、細胞骨格にかかわるE-cadherin, β-cateninなど)である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、上記のtissue microarray、各種測定・幹細胞マーカー(Nanog, Oct4, Sox-2, Klf4, c-Myc, BMI1, nestin, ABCG2)などの抗体、およびreal-time PCRを行う際のプライマーの購入に使用する予定である。
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