研究課題
細胞間の新たな情報伝達ツールとして、細胞放出型のエクソソームの存在に着目し、卵巣がん細胞から放出されるエクソソームが、がん細胞が腹膜に接着する際の最初の接触細胞となる腹膜中皮細胞に与える影響を解析した。卵巣癌細胞株 HeyA-8 を 150 ミリ培養皿20枚に培養し、上清約 300ml を回収、その上清を超遠心(100000xg、70分)することで高純度のエクソソームの分画を回収することができた。続いて、腹膜中皮細胞を大網の一部より初代培養し、その細胞に上述の方法で回収したエクソソームを蛍光マーカーPKH26 (Sigma)でラベルして添加したところ、蛍光の取り込みが中皮細胞でみられることが確認でき、エクソソームの伝達を確認した。さらにHeyA-8 と腹膜中皮細胞の共培養実験を行い、共培養により中皮細胞のCD44 やファイロブネクチンの発現が増強していることを確認した。CD44 はWestern Blot でエクソソームに豊富に含まれていることを確認しており、すなわち癌細胞から腹膜中皮細胞にエクソソームを介してCD44の伝達が行われている可能性があることが判明した。ハニカム膜 (honey-comb film)とは、3D porous scaffoldとも言われ、細胞が接着、増殖していく上での足場となる。この膜を用いて、卵巣癌細胞の接着、増殖が抑制されるか否かを検討した。臨床的に応用可能で伸縮性に優れた polyurethane (PU)素材を用いてハニカム膜を作成し、3種類の卵巣癌細胞株(SKOV3, Caov3, TOV21G)をハニカム膜上で培養したところ、コントロール膜に比較して粘液性腺癌由来であるCaov3細胞と明細胞腺癌由来であるTOV21G細胞で細胞増殖抑制効果を認めた。接着に関する抑制効果はハニカム膜で認めなかった。今後は増殖が抑制された細胞からどのようなエクソソームが分泌されるか検討予定である。
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