研究課題/領域番号 |
24659726
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
杉原 一廣 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (00265878)
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研究分担者 |
金山 尚裕 浜松医科大学, 医学部, 教授 (70204550)
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キーワード | 生殖医学 |
研究概要 |
本研究は、精子を活性化し高度生殖医療の効率を改善することを目的としたトランスレーショナルリサーチである。我々は、着床時に胚と子宮内膜で相同的に結合する細胞接着分子“トロフィニン”の研究を進めてきたが、その課程でトロフィニンに結合するペプチド:GWRQを同定するに至った。さらにトロフィニンがヒト精子の尾部分に発現しGWRQペプチドが、トロフィニンを介する分子スイッチに関与して、精子運動能を亢進させる事実を見いだした。本研究では GWRQペプチドを精子に添加し、活性化された精子による受精効率の改善および着床前後の胚発生にたいする影響をマウス卵と、トロフィニン・ノックアウトマウスの精子を用いて検証をすすめている。また、GWRQペプチドはマウスの精子の運動能に影響するので、マウスの精子運動の変化をCASA(computer assisted sperm analyzer)を用いて定量的に解析している。 平成25年度では、昨年度に引き続き「GWRQペプチドが精子表面に発現したトロフィニンを介して効果を発揮し、運動能を亢進する」という仮説を我々が作成したトロフィニン・ノックアウトマウスより採取したトロフィニン欠損精子を用いて検証を続けた。GWRQペプチドを野生型マウスとトロフィニン・ノックアウトマウスから採取した精子にそれぞれ添加し、CASA で運動率を詳細に測定したところ、野生型ではGWRQペプチドにより運動率が亢進したが、トロフィニン欠損マウスの精子では変化がないことが確認できた。さらに、GWRQペプチドで処理した精子の受精能をマウスの未受精卵を用いたIVFで定量的に検討した。IVFで得られたマウスの受精卵は、擬似妊娠マウスに胚移植して胎仔をつくり胎仔期および産後成長期も含めて何らかの異常が観られるか否か、すなわちGWRQペプチドで処理した精子が「胎仔に与える影響」についてnを増やして検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度、平成25年度に実施した研究により、GWRQペプチドの効果がトロフィニンの発現に依存性である事を確認できた。さらに、GWRQペプチドで処理した精子が「胎仔に与える影響」についてnを増やして検討中でありおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
GWRQペプチドで処理した精子の受精能をマウスの未受精卵を用いたIVFで定量的に検討する。具体的には、IVFで得られたマウスの受精卵を擬似妊娠マウスに胚移植して胎仔をつくり胎仔期および産後成長期も含めて何らかの異常が観られるか否か、すなわちGWRQペプチドで処理した精子が「胎仔に与える影響」について、long termの影響を含めてnを増やして検討を続ける。 一方、精子表面の糖鎖構造を除去する目的で酵素(未発表)を精子に加えて精子運動と糖鎖の関係を検討する。また、精子の受精能については、IVFの結果とよく対応することが知られているアクロビーズ法で解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
おおむね順調に研究が進行したことにより、消耗品に必要な経費や共同実験施設での実験と打合せのための旅費等が、当初計画より少ない額で研究遂行が可能であったため。 平成26年度は最終年度のため研究経費が必要であり、生じた次年度使用額とあわせて、ペプチドの合成依頼作成費用、マウスの購入費用、試薬の購入費として使用する。また、研究成果の発表や研究の打合せを目的とした出張経費としても使用する計画である。
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