多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、排卵障害を呈し生殖年齢女性の7-10%がする。PCOS患者が挙児希望のない場合にはカウフマン療法などにより周期的な消退出血を誘起するが治療しなくても日常生活に支障を来すことが少ないため治療から脱落することも多い。また若年者は婦人科受診に抵抗感を持つものが多いため、PCOSは無治療で放置されることが多いが、PCOSと耐糖能異常、メタボリック症候群、虚血性心疾患、子宮内膜癌などとの関連性が指摘されており、長期的な管理が必要と考えられる。PCOSに対しては患者に受け入れやすく、排卵周期が回復し、長期間使用できる治療方法の開発が必要である。 PCOSとインスリン抵抗性との関連が報告され、インスリン感受性改善薬の排卵周期回復に対する効果は既知の事実となっている。インスリン抵抗性がPCOSを理解する鍵であるとする考えが広く支持されている。食酢が、耐糖能を改善するとの報告がなされてきている。Johnston CSらは、インスリン抵抗性の患者において食酢が食後のインスリン感受性を改善することを報告した。 今回、7人の多嚢胞性卵巣症候群患者を対象として750mg酢酸含有食酢飲料を一日一回90日間内服する予備的研究を施行した。6人中6人でHOMA-Rが改善し(1例検査脱落)、7人中5人にLH/FSH比の改善が認められ、7人中4人に排卵周期の改善が認められた。 食酢と同様の風味を有するが食酢を含有しないプラセボ飲料を患者に投与し、これらを比較し食酢のPCOSへの効果を前方視的に研究を試みようと考えたが、対象となる飲料から酢の風味がとれず識別可能で調査が困難であった。そこで食酢内服前と内服後90日前後におけるTG、Tcho、LDL、HDL、disaccharidas、glucose-6-phosphateを測定し、効果のメカニズムの解析を行っている。現在も調査中である。
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