研究課題
近年、癌に対する診断法や治療法の進歩に伴って、若年がん患者が妊孕性を温存した治療を選択する機会が増えつつある。また治療寛解後の生活の質(QOL)維持に対しても、女性ホルモンの分泌という点から卵巣機能の温存は重視すべきである。つまり、原疾患の治療を行いつつも、卵巣機能を温存させる技術を開発することが医療現場に求められている課題である。卵巣機能温存の方法の1つとして、抗癌剤や放射線治療前に卵巣を体外に取り出し、凍結保存し、治療終了後に体内に自家移植する方法がある。今回、我々はこの卵巣凍結に着目し、悪性腫瘍の治療により卵巣機能を温存する手技を確立することを目的としている。まずは霊長類であるカニクイザルで実験し、その後、ヒトで応用することとした。このために、基礎実験として8匹のカニクイザルより卵巣を摘出し、CASにて凍結した。さらに、本学の倫理委員会の承認を得た上で、ヒトでも臨床応用を開始した。これまでに卵巣凍結の適応のある3人の若年女性において卵巣凍結を施行した。具体的には、本学の患者に対し、十分な説明を施行後、腹腔鏡下に片側の卵巣を摘出した。卵巣皮質より1cm*1cm*1mmの切片を5~10片作製し、不凍液を順次浸透させ、ガラス化法で凍結させた。凍結の手順は手際よく進めることができた。原疾患が寛解後、将来的に挙児希望がでた際には、この凍結した卵巣皮質を融解し、卵管間膜に移植する予定である。
2: おおむね順調に進展している
カニクイザルに対する移植は施行できていないものの、最終目標であるヒトの卵巣での凍結保存は実施できているため。しかし、融解や移植の検討についてはまだ実施できていないため。
凍結保存してあるカニクイザル、ヒトの卵巣皮質を融解し移植を行う。
妊娠、出産により、一時、研究を中断する必要が生じたため。卵巣凍結、融解の検討を行う。
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Plos one
巻: 9 ページ: 1,7
10.1371