研究課題/領域番号 |
24659733
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
前田 長正 高知大学, 教育研究部医療学系, 准教授 (60229309)
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研究分担者 |
沈 淵 高知大学, 教育研究部医療学系, 講師 (50294830)
都留 英美 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (70380318)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 臍帯血 / 幹細胞 / 脳性麻痺 |
研究概要 |
小児脳性麻痺は一旦発症すると, 生涯にわたり身体・精神の機能およびQOL(生活の質)を著しく損なう難治性の疾患である。しかし、脳症に対する根本的な療法はなく, リハビリテーション等の対症療法を行っているのが現状である。現在、高知大学では、小児脳性麻痺の発生確率が高い在胎週数33週未満児を対象に、自己臍帯血幹細胞輸血による臨床研究が進められているが、このような早産児から採取された臍帯血については、治癒効果の高い幹細胞の含有数や機能など明らかにされていない。そこで今年度は、高知大学医学部附属病院で分娩時に採取された在胎週数の異なる臍帯血を用いて、細胞表面マーカー解析、遺伝子マーカー発現解析、増殖能試験を行った。また、臍帯血幹細胞数の変動について、出生体重や在胎週数等との相関分析を行った。 細胞表面マーカー解析の結果、臍帯血には、CD34陽性細胞および、CD34/CD45陰性細胞集団が多く含まれていた。CD34/CD45陰性細胞集団の出現率は、出生体重と相関性があり、胎児の発育度合いに関連する可能性が示唆された。一方、CD34陽性細胞数は出生体重とは相関性がなかった。CD34陽性細胞数については、胎児の発育度合だけでなく、母体からの外的要因など、他の因子によってその数が変化するものと考えられた。 増殖能試験では、造血コロニー形成はCD34陽性細胞数と相関がみられたが、CD34/CD45陰性細胞集団とは相関はみられなかった。 さらに、遺伝子マーカー発現解析では、Oct3/4の発現が認められ、臍帯血細胞特有の多能性幹細胞が存在する可能性が示唆された。 今後は、より詳細に臍帯血幹細胞の同定を行い、その数や出現率についてデータベース化することで、自己臍帯血幹細胞輸血治療の有効性や安全性を明らかにしていく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度と25年度の2年間で臍帯血幹細胞に関する基礎的研究の実施を計画している。2年間で、臍帯血に含まれる治癒効果の高い幹細胞集団の選定を行った上で、種々の臍帯血幹細胞の含有数および細胞機能について解析を行う予定である。 本年度は、臍帯血に含まれる幹細胞集団(CD34/CD45陰性細胞集団)の選定を行うことができた。また、当初の予定を上回る、年間60検体以上の臍帯血の分析を行うことができたので、統計学上、信頼性の高い結果を得ることができた。 さらに、臍帯血特有の幹細胞の同定に向けて、質量分析法を用いた臍帯血幹細胞特異的分子の網羅的解析に着手しており、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、複数の細胞が含まれるCD34/CD45陰性細胞集団の中から、単一の臍帯血特有の幹細胞の単離およびクローン化を目指す。また、既存の種々の幹細胞(造血幹細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞など)についても、在胎週数の違いによってその数や出現率に変動がみられるのか、また、その要因はなんであるのかについて解析を進めていく。さらに、幹細胞の機能解析として、試験管内での分化能評価(血液細胞、神経細胞、グリア細胞、軟骨細胞など)を行う。 脳性麻痺児を対象とした臨床試験に向けて、前臨床試験として、低酸素性虚血性脳症モデルマウスを用いた臍帯血幹細胞の神経再生能の解析についても着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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