研究実績の概要 |
小児脳性麻痺は一旦発症すると, 生涯にわたり身体・精神の機能およびQOL(生活の質)を著しく損なう難治性の疾患である。しかし、脳症に対する根本的な療法はなく, リハビリテーション等の対症療法を行っているのが現状である。現在、高知大学では、小児脳性麻痺の発生確率が高い在胎週数33週未満児を対象に、自己臍帯血幹細胞輸血による臨床研究が進められているが、その治療メカニズムについては明らかにされていない。 26年度は、基礎研究として、フィーダーフリー培養法で得られた幹細胞の特性解析をFlow cytometryを用いて行った。臍帯血中に多く含まれることが知られている造血幹細胞(CD34陽性/CD45弱陽性)については、培養前は212±30.2細胞であったのに対し、培養後は3,579±802.4細胞(p<0.01)に増加していた。また、より未分化性の高い細胞群が含まれる幹細胞集団(CD45陰性/Lineage陰性)の含有率については、培養前は1.89±0.37%であったのに対し、培養後は11.04±3.82%(p<0.05)に増加していた。さらに、幹細胞集団中の間葉系幹細胞マーカー(CD44、CD73、CD90、CD105)や、未分化細胞マーカー(Tra-1-60、Tra-1-81)の発現について解析したところ、培養後、有意に上昇していることが明らかとなった。以上の結果より、在胎週数33週未満児など臍帯血量が少ない場合であっても、フィーダーフリー培養によって、未分化性の高い有用な幹細胞群を増殖させることで、より効果的な臍帯血幹細胞治療へ発展させることが可能と考えられる。 臨床研究としては、脳性麻痺の発症が疑われる子からの自己臍帯血細胞の採取については順調に行われたが、現在のところ細胞治療には至っていない。
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