研究課題/領域番号 |
24659734
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
西田 欣広 大分大学, 医学部, 講師 (10336274)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ESR / fetus / oxidative stress / umbilical cord |
研究概要 |
周産期医学の1つの目標として胎児の状態を非侵襲的かつ安全にどのように把握できるかということが重要な課題である。分娩時は子宮の持続的、間歇的な収縮に伴い子宮筋層内を走行するラセン動脈などの動脈が圧迫され、絨毛間腔の血流が減少し胎児は低酸素状態になる。予備能力が十分にある胎児(reassuring fetal status)であれば、通常の子宮収縮に伴う血中酸素分圧が低下しても胎児心拍モニタリングには影響を及ぼさない。しかし、胎盤機能不全などにより予備能力が低下し、慢性的な低酸素状態になっている胎児では、化学受容体を介して、また直接的な胎児心筋に対する抑制作用のために胎児徐脈が出現し、危険な状態に移行していく。ここまで進行すると現在の胎児評価である胎児心拍モニタリングの異常、出生後の胎児臍帯動脈pH値の低下、低Apgar scoreなどが観察される。このような陣痛に伴う子宮筋の虚血再灌流状態では大量の活性酸素種(ROS)が産生され、過剰な酸化ストレスが生じていることが推測される。これまでの我々の研究で酸化ストレス時の評価として、血中の抗酸化物資の中で、最も酸化ストレスに速やかに反応するビタミンC(VC:増加したROSを中和する)に着目して、その有用性を報告している(Matsumoto S et al. J Neurochem Res. 2010)。電子スピン共鳴法によりビタミンCラジカルを測定し、間接的にビタミンCをリアルタイムに測定する手法を用いて、分娩時の酸化ストレスをより早い段階で評価(これまでの胎児評価法で観察される状態より前の段階)を可能とする本研究は、reassuring fetal statusからnon-reassuring fetal statusに至る過程の解明につながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度から25年度にかけては電子スピン共鳴法により臍帯血中のビタミンCラジカルを測定し、間接的にビタミンCをリアルタイムに測定する手法を確立することを第一義的な目標としてこの1年研究を開始したが、思いのほか順調に研究成績を得たため、昨年末に論文化した上に英文誌に投稿し、すでにacceptされている(Y Nishida et al.: New evaluation of fetal oxidative stress:measurement of the umbilical cord blood dimethyl sulfate-induced ascorbyl free radical by an electron spin resonance method. J Maternal-Fetal Neo Med, 25(1):2499-2502,2012.)。今後はこの確立された手法をもとにさらに各種病態におけるさらなる解析を続けているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は平成24年度に測定したVCRの結果のまとめと解析、論文化するとともにFRAS4による酸化度、還元度の測定と臍帯血プロテオミクス解析を行う。 要点)臍帯血をProteoMinerタンパク質Enrichmnentシステム(Bio-Rad)によりアルブミンを除去したのち、differential display法(2次元電気泳動法)を行い、結果をPDQuest Advanced (Ver.8,Bio-Rad)により解析。 方法として平成24年度に得られた血液サンプルに対してFRAS4(活性酸素・フリーラジカル自動分析装置)を用いて酸化度(d-ROMs Test)測定を行う。原理はサンプル中のヒドロペルオキシドの定量化である。酸化ストレスが多くの疾患の危険因子として重要性が認識されており多くの研究が報告されている(Cornelli U et al.2000)。次に同じサンプルで血液の還元度(BAP Test)測定を行う。原理として三価鉄塩FeCl3がサンプル中の抗酸化物質の作用で二価鉄Fe2+イオンに還元され色の変化を光度計で測定し、サンプルの還元力をみる。さらに得られたサンプルを用いてプロテオソーム解析(2次元電気泳同動システム、迅速蛋白切出システム)を行い、酸化ストレスに着目した網羅的蛋白の解析を行う。 最後にd-ROMs Test,BAP testおよびプロテオーム解析の結果に対して統計学的解析を行い、論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は引き続き研究計画を進め、プロテオソーム解析(2次元電気泳同動システム、迅速蛋白切出システム)を行い、酸化ストレスに着目した網羅的蛋白の解析を行う 。そのための消耗品、関連試薬の購入に研究費を充てる。さらに平行して臍帯血中のd-ROMs Test,BAP testを行うため関連試薬の研究費を算定している。研究終了に合わせて統計学的解析を行い、論文にまとめる。
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