着床前期胚発生は、受精、胚性ゲノム活性化、コンパクション、胚盤胞腔の形成、内細胞塊と栄養外胚葉への分化および分化全能性の獲得など、生殖生物学及び再生医学において極めて重要な事象を含む。本研究では、着床前期胚に特異的に発現する新規遺伝子に注目し、着床前期胚の分割停止モデル、あるいは着床不全モデルの作成とその分子生物学的機構の解明を目指す。本年度はsmall hairpin RNA (shRNA) 発現ベクターの導入に当たり、ゲノムにインテグレーションされる位置によって発現効率が変化する(positional effect)ことを避けるため、Recombinase- mediated cassette exchange (RMCE) ターゲッティングシステムを用いた。ICRマウスの2細胞期に電気的に割球融合させて作成した4倍体の胚盤胞(50個)の胚盤胞腔に、B6 129S6のバックグラウンドを持つES細胞(各shRNAベクターの導入につき3クローン以上を採取)を注入し、偽妊娠ICRマウスの子宮内に移植した。生直後に、マウスの尾を用いて、サザンブロットによりshRNAコンストラクトのゲノムへのインテグレーションを確認した。明らかな外表奇形を認めないことを確認し、正常マウスと交配させ、妊孕性を検討した。妊孕性を認めない雌マウスからは未受精卵及び体外受精後の着床前期胚発生、卵巣組織切片に形態学的異常がないか検索する。一方、雄トランスジェニックマウスは、正常雌マウスと交配させ、次世代雌マウスから得られた未受精卵及び体外受精後の着床前期胚発生、卵巣組織切片に形態学的異常がないか検討した。
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