研究課題
流産や死産などのヒト発生異常において、原因検索のために染色体検査が行われるが、このような検体は状態が不良で、生細胞を用いた分染法などの染色体解析が不可能なことが稀ではない。このような場合、ゲノムDNAを用いた分子遺伝学的な解析が有効であるが、その一方で、このような検体では母体由来組織の混入を高率に伴うため、従来の遺伝マーカーを用いた手法(マイクロサテライト解析やMLPA (Multiplex Ligation-Dependant Probe Amplification)法等)では、最大3種類の遺伝子型が様々な比率で混在するため、「診断不能」あるいは「誤診」につながる。そこで、事前に両親の多型情報を取得した上で、解析対象試料中の児ゲノムと母ゲノムの混在比率を想定し、実測値から児ゲノムの解析結果を予測すれば、ノイズの中から児由来のシグナルを抽出し、胎児の核型を確定診断することができる。そこで、予測モデルと実測値の検証のために、父、母、児の精製ゲノムDNAを用い、母ゲノムと児ゲノムを様々な比率で混合し、その実測値から最も効果的な予測モデル式の作成を試みた。その結果、別途取得した父母の一塩基多型情報から混合比率を推定したのちに、BAF(B allele frequency)を補正する手法が最も適切と判明した。これらの解析手法を用い、すでに網羅的一塩基多型解析まで行い、母体組織混入のために診断不能であったと考えられる過去症例の再検証を行った。その結果、児の核型を推定診断し、異数性の診断に成功した。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Journal of Human Genetics
巻: 59 ページ: 326-331
10.1038