研究課題
ヒトの脳機能には運動野、体性感覚野のように、反対側大脳半球優位で処理される機能と、言語野のように優位半球がある機能があることが分かっている。PETやfMRIなど機器の進化に伴い、ヒトの局所脳機能の研究は進化しつつあるが、測定機器の空間分解能、時間分解能的などの問題や、倫理的な問題が少なからず存在する。一方、ヒトではできない局所脳機能の研究は、動物を使用した侵襲的な研究が主であった。われわれはフラビン蛋白蛍光法という脳に侵襲がなく、神経活動を可視化できる方法を用い、脳機能を測定している。さらに同法を応用し、局所脳機能を無侵襲かつ可逆的に抑制できる光抑制法を発見し、報告した。本研究ではこの可逆的光抑制法を用い、大脳聴覚野の機能的左右差、聴覚野内領域間の関係、さらには他モダリティとの関係性を解明することを目的とし研究を行った。通常片側から入った音は反対側の大脳聴覚野(contra)で主に処理されていると考えられていたが、本研究の結果から同側の大脳聴覚野(ipsi)でも反応がみられることがわかった。そこでipsiの反応が単純に脳梁を経由し反対側の反応を反映しているだけか、もしくはipsiでの処理が何か意味あるもので、contraに影響を与えているものなのかを確認するため、左右の大脳聴覚野の関係を調べる実験を始めた。前方スピーカーからの音に対して、両側同時に大脳聴覚野機能を測定、聴覚野マップを得た後、片側大脳聴覚野全体を光抑制した場合の反対側大脳聴覚野の反応を測定した。その結果、大脳聴覚野内のコア領域といわれる一次聴覚野、前聴覚野の反応に大きな変化はみられなかったが、周囲のベルト領域と言われる部分の反応が明瞭にみられるようになった。すなわちベルト領域の反応は反対側大脳聴覚野から抑制的な入力を受けている可能性が示唆された。現在、この反応の変化が何を意味するのか研究を継続中である。
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