研究課題
頭頚部腫瘍の化学療法の副作用として悪心・嘔吐が生じる場合があるが、この原因は、抗癌剤の投与後、 消化管のクロム親和性細胞からセロトニンが放出され、迷走神経のイオンチャネル型セロトニン 3 受容体(5-HT3 受容体) の応答が引き起こされ、延髄の嘔吐中枢を刺激するためである。我々は、抗癌剤の中にヒト の 5-HT3 受容体に直接作用し、受容体の応答性を増強させるものや抑制させるものが存在することを見いだした。このように抗 癌剤がヒトの 5-HT3 受容体に直接作用し、その応答性を変化させることは我々の知る限り、世界 で初めての報告である。また、5-HT3受容体には複数のサブユニットが存在し、組織によって5-HT3受容体サブユニットの発現の構成パターンが異なることが知られている。そこで本研究では5-HT3 受容体のサブユニット構成による抗癌剤の感受性の違いを解析した。我々は5-HT3 受容体のサブユニット構成の違いによって異なる影響を与える抗癌剤を複数見いだした。特にトポテカンは、5-HT3 A受容体のホモマーに対しては抑制的に働いたが、5-HT3 AB受容体のヘテロマーに対しては、反対に反応を増強させた。さらに、5-HT3 B受容体にはY129Sの遺伝子多型が存在するが、この129番目のアミノ酸残基がチロシンからセリンに替わることによって、トポテカンに対する感受性も変化することを明らかにした。これらの研究成果は抗癌剤の副作用の一つである催嘔吐作用の少ない薬剤の開発 に繋がるとともに、化学療法の副作用の個人差にヒトの遺伝子背景が関与する可能性を示唆するものである。
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