研究概要 |
(1)分化誘導:昨年度に引き続き、気管上皮様細胞へ分化させるためiPS細胞から胚様体を形成させた。まずiPS細胞とフィーダー細胞を分離し、得られたiPS細胞を低接着性の96穴プレートに1穴あたり2000細胞になるように播種し、数日間培養し胚様体を形成させた。培地にはKSRを添加したノックアウトD-MEM(無血清培地)を用いた。形成させた胚様体をゼラチンコートした培養皿に移し、接着培養を行った。接着させた胚様体の培養を継続すると気管上皮様細胞が誘導された。また、アクチビンやb-FGFなどの増殖因子や分化誘導培地としてretinoic acidを含有するSAGM(small air way growth medium)を使用しiPS細胞の上皮分化を促し、分化誘導方法の再現性を確認した。さらに、in vitroにおいて線毛上皮を構成する基底細胞、線毛細胞の再生をHE染色と免疫組織化学的に確認した。 (2)気管上皮欠損部への移植による評価:①移植に先立ってin vitroで行った方法で作成した胚様体を包埋させた人工材料をラット気管欠損モデルに移植する方法を検討した。人工材料をコラーゲンゲルでコーティングし、コラーゲンゲル内に胚様体を包埋させた。②次に移植の手術手技を検討した。全身麻酔下にラットの気管を露出させ,開窓し気管欠損とした。先に作製した移植材料を気管欠損部に固定し閉創した。以上の方法で気管欠損モデル動物を作製し移植実験を行った。移植材料は気管欠損部に生着し,気管内腔の狭窄を認めなかった。
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