研究課題/領域番号 |
24659760
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
石倉 涼子 鳥取大学, 医学部附属病院, 助教 (00335530)
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研究分担者 |
井上 幸次 鳥取大学, 医学部, 教授 (10213183)
宮崎 大 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (30346358)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 角膜内皮 |
研究概要 |
角膜内皮が、炎症刺激に対していかなる分子応答を示すかを検討するため、炎症応答性レセプターを介した応答性を検討した。炎症応答機序は、感染性病原体に対する応答、さらに内因性の炎症性物質に対する応答に大別され, それぞれのリガンドは、Pathogen associated molecular pattern (PAMP)および、Damage associated molecular pattern (DAMP)に大別される。とくにPAMPに対する応答を検証した場合、角膜内皮はToll like receptor (TLR)のリガンドに対してIL-6やインターフェロン応答を誘導した。TLRの中では、角膜内皮は恒常的にTLR9を強く発現している。TLR9は、各種細菌やウイルスに含まれる非メチル化DNAに対するレセプターであり、これらの病原体を認識する機能がある。 角膜内皮感染における代表的な病原体としては 単純ヘルペスウイルス(HSV)が知られている。そこでHSV感染後の角膜内皮のトランスクリプトームを用いて主たるカスケードを解析した結果、インターフェロン応答、感染に対するpattern recognition receptor(PRR)応答が主体であり、これは、IL-29, IRF7などにより制御されている可能性がうかびあがってきた。とくに発現上位の遺伝子において ストレス応答タンパク群に加え、Indoleamine 2,3-deoxygenase 1 (IDO1)が特徴的に誘導されていた。IDO1の機能を抗ウイルス作用、免疫調節作用の両面から検証した結果、IDO1には抗ウイルス作用は認めず、調節性T細胞の誘導機能を認め、感染内皮を自己破壊から守る機能があることが判明した。PRRによるIDO1発現機構を検討した結果、TLR9およびTLR3経路による刺激が主体であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
角膜内皮の感染応答転写プロファイルを用いてbioinformatics手法による解析に着手した。感染応答刺激として単純ヘルペスウイルス感染を用いてグローバルな転写応答を包括的に提示することができた。転写応答制御にかかわる候補因子群を抽出し、このなかから代表的な因子としてIDO1の機能解析、さらにその制御機構に関する解析を行った。IDO1の機能解析の結果、IDO1は、感染応答制御因子の中でもっとも主要な因子である可能性が視された。とくに機能解析の中で、角膜内皮が獲得免疫系をいかに調節するかに関して、角膜内皮を抗原提示細胞として使用するアッセイ系を構築した。このアッセイ系によりIDO1が調節性Tリンパ球を末梢性に誘導することを示すことができた。IDO1の誘導経路を検索した結果、TLR3,TLR9といったPAMPに関連するレセプターにくわえ、細胞障害や加齢産物を認識するDAMPに関連するレセプターの中、RAGEも関与することを見いだした。これまでRAGEはAdvanced glycosylation end productsのレセプターとしてしられていたが、角膜における炎症応答に関してはその関与は未知である。そこで、これらが、角膜内皮の炎症応答をいかに制御しているのかの検証をしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
角膜内皮における制御因子として重要と想定されるIDO1の発現調節機構についてさらに検証を進める。次に、角膜内皮感染にとって重要な病原体であるサイトメガロウイルスと角膜内皮の関連性に関して検証を進めていく。まず、CMVが内皮に感染しえるかにくわえ、感染しえるなら、その感染に関して利用されるPAMPあるいはDAMPにかかわるレセプター群を明らかにする。とくに CMV感染応答をグローバルに理解するため 転写応答プロフィールをHSVと同様なbioinformatics手法を用いて解析をおこなっていく。とくに、CMV感染が角膜内皮を介してひきおこす炎症応答をひとつの病態モデルとして理解するため DAMP,あるいはPAMPに対する応答面から明らかにしていき、内皮の炎症応答反応の一般化を試みる。 DAMPにかかわる重要候補レセプターとしてRAGEがあるが、これまでRAGEはAdvanced glycosylation end productsのレセプターとしてしられてきた。しかし、これまでの我々の結果から、RAGE自体も積極的な感染応答の制御機構の一員になりえる可能性が判明しつつある。このためその詳細をあきらからにし、DAMP, PAMPのクロストークにかかわる機構をあきらかにしていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでの解析により明らかとなってきた内皮の炎症応答における主要制御因子の役割の詳細をさらに検証していく。 PRRにより惹起されるインターフェロン応答あるいはNF-κB 経路の役割の詳細を解析するためWestern blot、転写因子スクリーニングアッセイ、Enzyme mobility shift assay(EMSA)、レポータープラスミドのtransfectionによるルシフェラーゼを指標としたプロモーター活性測定を行い、RNAi、モルフォリノオリゴ、抗体投与による阻害およびシグナル分子の過剰発現系により検討する。 感染応答解析対象病原体として、HSV及びCMVを用いる。内皮の抗原提示細胞としての機能解析は、FITC dextran/horse radish peroxidase とりこみおよびFACS 解析を用いたantigen uptake assay、BrDUアッセイ により評価を行う。 抗原特異的T細胞line は, IL-2 の存在下で抗原とともにperipheral blood mononuclear cell を2週間培養して作成する。調節性T 細胞の誘導性に関してT 細胞サブセット特異的転写因子を指標にFACSを用いて検索する。さらに、抗原特異的Th1, Th2, Th17 サイトカイン分泌に関してもFACSにより解析を行う。 さらに主要制御因子の役割の詳細をin vivo で明らかにし、臨床応用への礎をつくっていく。特に標的となりうる重要なシグナル分子を遺伝子改変マウスあるいは、特異的阻害剤投与などの手法によりvivo での寄与を明らかにする。
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