平成24年度前半の検討結果から、in vivo(生体)で網膜組織全体のAMPK活性を検討することが困難であると判明したため、実験系を培養系に変更し、また網膜を構成する細胞ごとに検討を行う方針とした。未熟児網膜症では、虚血に伴う組織内エネルギーの低下を基礎に血管新生、増殖膜形成を来す。また未熟児網膜症の発症に重要な細胞は網膜を構成する網膜色素上皮細胞と血管内細胞、マクロファージである。そこで平成24年度の後半に、網膜色素上皮を用いてエネルギーの低下がAMPKの活性に及ぼす影響を培養液内のグルコース 濃度を減少させ検討した。その結果、網膜色素上皮細胞のAMPKが活性化するグルコース濃度条件を設定することが出来た。 この条件設定の研究では、網膜色素上皮細胞としてヒト由来のARPE-19細胞を用いた。しかし、本研究では、未熟児網膜症が研究対象であるため、最終的に使用する細胞は未熟児網膜症発症モデルマウスから単離した初代培養網膜色素上皮細胞となる。そのため、平成25年度は、マウスから網膜色素上皮細胞を単離することを試みた。マウスから網膜色素上皮細胞を単離する方法についてはこれまでに報告がある。そこでこの報告にしたがって、成体マウスの眼球から網膜色素上皮細胞を単離し、初代培養を試みた。その結果、網膜色素上皮細胞の単離に成功し、初代培養の方法を確立することが出来た。そこで、次のステップとして今後は新生マウス眼から網膜色素上皮細胞を単離培養することを試みたいと考えている。新生マウス眼は成体眼に比べて眼球が小さく、単離できる網膜色素上皮細胞の数も少ないと予想される。今後の実験に必要な網膜色素上皮細胞を得るために、どの程度の数の新生マウスが必要であるかを検討することは重要であると思われる。
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