現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼内薬物送達の効果的な達成のためには、薬物送達効率の問題も重要であるが、実は薬物送達時の妨害因子(例えば炎症など)をいかに抑制するかが重要である。我々は、臨床眼科学で現在急速に発展している眼内注射の問題に取り組んだ。その結果、新たな病因を確立して、論文発表するに至った。これは、極めて斬新なアイデアであり、今後検討されると思われるが、新たな問題提議ができたことは大きな成果である。 論文 Otsuka H, Kawano H, Sonoda S, Nakamura M, Sakamoto T. Particle-induced endophthalmitis: Possible mechanisms of sterile endophthalmitis after intravitreal triamcinolone. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2013 Mar 11;54(3):1758-66. doi: 10.1167/iovs.12-11247.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、特に細胞死に伴い崩壊組織・細胞から細胞外へ放出される分子DAMPsに着目して研究する。DAMPsはRAGEや一部のTLRのリガンドとなることで、炎症・組織修復などに関連することが知られ、炎症関連自然免疫に関する最近のトピックスである。昨年までの研究で「細胞死と生体反応」に注目して解析を行っており、眼科領域におけるDAMPsに関する研究に取り組んできた。具体的には、代表的なDAMPsであるHMGB1(high mobility group box 1)について報告した(Arimura N, Sakamoto T, et al, 2008, Graefes;Arimura N, Sakamoto T, et al, 2009, Lab Invest, Terasaki et al. PlosOne submitted)。それらの結果から、糖尿病網膜症、黄斑変性などの通常の網膜病変でも自然免疫が活発に働いており、その点を明らかにせずに薬物治療を行っても、期待効果は得られないと予想されている。そこで、その点を明らかにする。各種網膜硝子体疾患の生体標本(硝子体サンプル等)におけるDAMPs/PAMPsの解析を行い、背景因子との比較により、病態への寄与の大きい分子を同定する。特に、生物学的製剤などで治療後のサンプルについて注意する。代表的PAMPsであるLPS(Lipopolysaccharide)についての予備実験は終わっており、細胞内シグナルの解析も順調に推移しており、2013年後半には結果を得る予定である。
|