研究概要 |
昨年までの研究で、眼球への直接注射を治療法として用いてきた。しかし、患者側の負担を考えると、点眼などの非侵襲的治療の可能性を探ることも必要である。そこで、現在臨床で用いられている点眼薬が実際に網膜硝子体に有効濃度を送達できるかについて検討した。我々は過去に非ステロイド性抗炎症薬(Non-steroidal anti-inflammatory drug, NSAID)がラットの脈絡膜血管新生を抑えることを報告した(Yoshinaga N, Sakamoto T, et al. Lab Invest, 2011)。そこで、Dicrofenac, Napafenac, Bromfenacの点眼剤が、家兎の網膜に達しているかについて検討した。その結果、Tmax 2時間程度で、角膜、前部強膜、網脈絡膜にそれぞれの薬剤が到達したことを見出した。また、ヒトcyclooxigenase(COX)を用いることで、それぞれの薬剤がCOX1, COX2を実際にどのように抑制しているかを測定して、IC50を算出した。そのデータを基に、前房水中や網膜中の薬剤濃度が、実際にCOXを抑制可能かどうかを解析した。その結果、brompfenacは通常の1日2回点眼で、後眼部にIC50を常に超える濃度が到達していることがわかった。実際にこれがblood ocular barrierの破壊を抑制するかどうかを、Con-A誘発眼内炎における眼内蛋白濃度測定によって評価した所、bromfenacのみが有意にBlood-ocular barrierの破壊を抑制した。この結果は、点眼薬による後眼部疾患の治療への可能性を示したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
眼内薬物送達の効果的な達成のためには、薬物送達効率の問題とともに、どの送達経路が、標的臓器における有効薬物濃度を効果的に達成できるかを調べることが重要である。そこで、本年度は眼科領域で最も汎用されている点眼治療が、網膜疾患の治療に有効となり得るかを調べた。その結果、予想外な有効性を発見して、論文発表するに至った。これは、薬物送達を臨床応用あるいは企業化する際に極めて重要な情報を得たことになる。 論文 Kida T, Sakamoto T et al. Plos One (minor revision, 4-8-2014現在)
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