研究実績の概要 |
昨年までの研究で様々な薬物が眼内炎症を制御していることが分かった。しかし、実際の臨床を見てみると、vascular endothelial growth factor (VEGF)を抑制する薬物が広範に利用されており、それらの効果を詳細に検討しないと新規薬物の開発は困難である。そこで今年度は、抗VEGF薬bevacizumab, ranibizumab, afliberceptについて網膜色素上皮(RPE)層の上下における作用を詳細に検討した。In vitro極性RPE細胞をboyden chamberの上層に培養し、十分に極性を獲得したことをTER、VEGF極性分泌で確認後、各種薬物をupper chamberに投与した。その結果、RPE透過性はranibizumab>bevacizumab> afliberceptであったが、RPE下のVEGF抑制能はaflibercept>ranibizumab>bevacizumabであった。この作用にはFc receptorを介した、蛋白キナーゼC(PKC)依存性の細胞内輸送が重要であることが考えられた。これは、1型脈絡膜新生血管の治療にafliberceptが有効なことを極めて良く説明することができる現象である。このように、眼内薬物治療には今までと異なる解析が必要なことを見出すことができた。本研究で明らかになったように、眼内薬物動態の制御にPKCなどの細胞内シグナル伝達物質が重要であれば、薬物投与に際しては単剤投与よりも、合剤投与の方が効果を発揮する可能性があり、今後の研究の方針に大きな示唆を与えた。
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