当該年度では、眼表面の生体4Dイメージング手法ならびにLysM-eGFPマウス(好中球蛍光標識マウス)を用いて角膜縫合時における炎症細胞の生体内で動態解析ならびに治療で用いられている点眼薬の効果や、抜糸による炎症細胞の動態への影響についての解析を行った。骨髄系単核球(主に好中球)が標識されたLysM-eGFPマウスの角膜の中央全層に10-0ナイロン糸で約1mmの縫合を行い、好中球の動態を蛍光顕微鏡ならびに生体4Dイメージングを用いて解析した。また、縫合後0.1%ベタメサゾンならびにcontrol群としてPBSを 1日4回点眼し、好中球の動態への影響を検討した。さらに、角膜縫合1週間後に抜糸を行ない、好中球の動態の変化を経時的に観察した。好中球は角膜縫合により角膜輪部血管から遊走し、縫合部へ浸潤した。好中球の角膜への浸潤はステロイド点眼群とPBS点眼群とで明らかな差を認めなかった。縫合糸がある間は好中球の浸潤が継続したが、抜糸することで、好中球の浸潤は徐々に減少し、抜糸後1週間で消退した、角膜縫合により縫合部に好中球が浸潤し、抜糸により好中球の浸潤が消退することが明らかとなった。また。ステロイド点眼は角膜縫合による好中球の浸潤に対して明らかな抑制作用を示さないと考えられた。 また、角膜縫合により好中球が著明に浸潤するのとは対照的に、角膜内マクロファージ(CX3CR1陽性細胞)や、樹状細胞(CD11c陽性細胞)はほとんど動かないことも明らかとなっている。 また、角膜アルカリ外傷マウスモデルを用いての炎症細胞の動態解析も進行中であり、好中球はアルカリ外傷部に著明に浸潤するのに対して、角膜内マクロファージ(CX3CR1陽性細胞)や、樹状細胞(CD11c陽性細胞)には大きな変化を生じないこともわかってきている。
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