研究概要 |
我々はiPS細胞に眼発生に関わる重要な転写因子の一つである pax6を遺伝子導入した後、限界希釈法を用いることで nestin, musashi1, six3, 網膜前駆細胞の分化に関わる転写因子 chx10を同時に発現する網膜神経前駆細胞株を複数樹立する事に成功した(Suzuki N et al. Neuroscience Letters)。 我々がiPS細胞から樹立した網膜前駆細胞はβIII tubulin陽性の神経細胞で、視細胞前駆細胞マーカーである CD73を非刺激状態で 50%程度、ロドプシン蛋白を中等量発現する。この細胞は様々な成長因子やケモカインに反応して更に分化して 緑-オプシン, 青-オプシン, 赤-オプシンを発現する。ケモカイン stromal cell-derived factor 1(SDF1、CXCL12)に反応して強い増殖を示し 90%以上が CD73陽性の視細胞前駆細胞となる。 SDF1受容体である CXCR4の発現はこの細胞では sonic hedgehogで強く誘導される。この株化視細胞前駆細胞ではSDF1/CXCR4経路の拮抗剤である AMD3100存在下では CD73陽性細胞の出現は抑制され、その後の分化は見られない。この細胞はmonocyte chemoattractant protein1 (MCP1、CCL2)に反応して緑、青、赤の 3種のオプシンを発現する。SDF1存在下での培養終了時 (mature)には細胞質は楕円形から長方形となり Rhodopsinは核から離れた細胞質全体に存在する。 これらの細胞株を用いて、現在視細胞分化の詳細を検討している。
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