研究課題
家兎の広汎気管欠損モデルに有用な代用気管を開発した。チタンニッケル形状記憶合金ワイヤーを紡錘形コイルに整形し、さらに中心部を二重と成形することで、術後2ヶ月時における100%生存を達成することができた。コイルに不可避的に発生する肉芽組織を抑制することができれば、理想的な代用気管に近づくとの発想にたち、細胞増殖や線維化に関係する細胞内mTORシグナル伝達系を家兎で検証した。気管欠損部に形成される肉芽組織は、mTOR活性が気管上皮細胞における発現より20~40倍に亢進し、ラパマイシン全身投与により5~15倍程度に抑制され、肉芽組織においてmTOR活性は亢進し、ラパマイシンにて抑制できることが明らかとなった。しかし、ラパマイシン投与により本来であれば術後2ヶ月時には瘢痕化する肉芽組織が、半液状の不良肉芽と変化し呼吸器感染の原因となっていた。心移植で免疫抑制剤としてラパマイシンを用いる場合は、縫合不全や深部感染を予防するため術後2週以降に投与されている。そこで、ラパマイシンを術後2週より投与したところ、呼吸器感染と肉芽形成は抑制され上皮化も良好であった。代用気管コイルにラパマイシンを浸漬させ局所応用したところ、肉芽組織の上皮化が抑制される結果となった。気管欠損部を放置した場合の線維性被膜による治癒過程も検証したが、上皮の細胞増殖マーカPCNA発現や基底膜のvimentin発現は低下し、上皮化が低い場合に高度の気管狭窄が発生していた。以上の結果より、ラパマイシンは投与方法により作用発現が異なり、代用気管に用いる場合は、術後2週以降の全身投与が適切と結論された。また、欠損部自然修復過程も正常気管と比べて細胞活性など障害されていることから、治癒過程を改善する方策も今後の気管形成の重要な課題と結論された。
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