研究課題
糖尿病性皮膚潰瘍、褥瘡、慢性下腿潰瘍、外科手術創部開放創において、明らかな炎症症状を伴う場合、あるいは膿汁を分泌している場合、また敗血症を伴う感染症の場合の創面あるいは骨髄のデブリドマン時に得られた組織を切除後急速に凍結し、-80度Cで保存した。同時に定法にのっとった寒天培地による旧来の細菌培養を検査室で実施した。通常の培養法で検出された細菌は、MRSAとセラチア、緑膿菌、バイクテロイデスであった。DNA解析用のサンプルは解凍後RLTバファーで抽出したサンプルに0.1mm glass beadsを入れ、Qiagen Tissue Lyserを用いてモホジェナイズした。遠心後エタノール沈殿させ、吸光計の計測により20ng/μlの濃度になるようにDNAを抽出した。創傷から明らかな膿什が得られる場合、あるいは創面からLevine法で採取したぬぐい液はQIAamp DNA mini Kitを用いてDNAを抽出した。DNAサンプルを100ng/μlに調整し、27Fと509Rの2つのプライマーで16S rRNAをコードしているV1とV3領域を横切って増幅した。得られたサンプルを電気泳動して得られた像は、16S rRNA領域が増幅できたことを示していた。シークエンス用に、第2段階のPCRを行った。具体的には25塩基の454リンカ―配列とマルチフレックスのインデックス配列とテンプレート特異的配列で設計した。第2段階PCR試行後、Agencourt Ampure beadsを使用してリンカ―を除いた。以上の研究を東北大学病院検査診断部の協力を得て行った。今後のDNA検査の迅速化に対する検討会も実施し、検査室内でのキット化、マンパワーの再配分を検討中である。
3: やや遅れている
急速凍結した組織サンプルやLevine法で採取したぬぐい液からのDNAの抽出およ16SrRNAをコードしているV1とV3領域を横切って増幅したサンプルの電気泳動では16SrRNA領域が増幅できたことを示していた。シークエンス用に、25塩基の454リンカ―配列とマルチフレックスのインデックス配列とテンプレート特異的配列で設計する段階で技術的な面から進行が滞っている状況である。
次世代シークエンサーはイルミナ社のGenome Analyzerかアプライドバイオシステム社のSOLiD4を用いてシーケンスを得てから、細菌16S rRNAにアノテーションする。そのときにヒトゲノム由来の配列は何らかの原因で読み損なった配列と同様に捨てられる。したがってヒトゲノム由来配列を決定することは無い。ここで得られた配列をGenBank, RIDOM, EzTaxonなどの既存のデータベースと比較・解析することにより菌種を同定する。ターゲットとなる細菌を絞ったキット化、迅速化を図り、臨床症例に対する薬剤処方の効率化を図る。その結果、5時間以内の細菌を同定できるような体制とし、この迅速診断法が治療結果に寄与することを調べる前向きコホート研究を開始する。また、現在市場に出ているプローブのセットは敗血症分離株のライブラリーから合成されたものであり、創部に特化したものは無い。前年度蓄積したライブラリーから頻度が高く、病原菌として重要な菌を網羅するようなプローブの組み合わせをキット化する。その組み合わせの中にはMRSAに特有のmecA遺伝子を含むようにすることで、薬剤耐性菌の検出に有利になる。またhousekeeping geneとしてβアクチンを入れ、偽陰性反応を検出する。各プローブはTaqManとSYBRGreenを用いてリアルタイムで検出する。さらに段階希釈したDNAサンプルを同時に測定することにより、定量解析を検討する。これらの迅速診断に向けた院内の体制を臨床検査部門と共同で構築する。午前中に採取したサンプルを同日内に遺伝子診断ができる体制を作る。
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額あわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (3件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J Dermatol Sci
巻: 70 ページ: 130-138
10.1016/j.jdermsci.2013.01.004
Wound Repair Regen
巻: 20 ページ: 473-481
10.1111/j.1524-475X.2012.00778.x.
巻: 20 ページ: 887-895
10.1111/j.1524-475X.2012.00851.x.
http://www.prs.med.tohoku.ac.jp/index.html