研究概要 |
分子状水素は、ヒドロキシラジカルの選択的消去を介して、酸化ストレス関連疾患の発症・進行を抑制するものと考えられ、各種疾患モデルにおいてその有用性が報告されている。しかしながら、皮膚欠損創や褥瘡・皮弁モデルなど形成外科領域での報告がない。本研究では、分子状水素の急性潰瘍、褥瘡などの慢性潰瘍、皮弁挙上後の生着域など創傷治癒に与える影響を検討する。まずは動物モデルを用いた、分子状水素の創傷治癒に与える影響を解析した。 ①水素の皮弁生着に対する影響の検討:皮弁モデルは、McFarlaneらの方法(Plast Reconstr Surg. 35:177-8,1 965.)に従い、ラット背部にランダムパターン皮弁を挙上した。実験群は水素水(1ppm)、対照群は脱気した水素水を経口投与した。1週間後の皮弁の写真撮影を行い、画像解析ソフトScion Imageにて皮弁壊死部の面積を測定し、それぞれの対照群と比較して水素の影響を検討したところ、皮弁生存領域を59.2%拡大した(p<0.05)。また皮弁茎部から2㎝の部分の組織標本を作製したところ、水素投与群で皮弁内の血管数が有意に増加していた。また血清中のNO2-濃度を測定したところ、両群間には有意差を認めなかった。 ②水素の褥瘡に対する影響の検討:褥瘡モデルはWassermannらの方法(Wound Repair Regen. 17(4):480-4,2009.)で行った。ヌードマウス大臀筋下に金属板を移植後、ネオジウム磁石により圧を負荷し、褥瘡を作成した。しかし褥瘡モデル自体が安定化しないため、現在安定した結果が得られるよう検討中であった。 平成25年4月より、研究代表者が海外留学のため、研究中止となった。
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