研究課題
頭頚部領域の組織変形に対し優れた弾性軟骨再生治療を開発することは、全世界で100万人以上の患者に待ち望まれている。申請者 は再生医療の実現化を目指し、弾性軟骨であるヒト耳介軟骨膜に存在するヒト軟骨前駆細胞の分離・培養法などの細胞操作法を確立し てきた(Takebe T, et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2011)。これらの前駆細胞を用いた再生治療を実現化するためには、in vitroにおいて成熟軟骨細胞へ終末分化誘導する方法論の開発が急務であった。本研究では高効率な弾性軟骨創出法の開発を目指し、まず軟骨の生理分化プロセスの解明を試みた。軟骨前駆細胞を含む発生初期の耳介軟骨を独自のライブ観察系に導入しin vivoにおいて追尾定点観察を行ったところ、一過性に血液灌流が生じ血管内皮細胞が侵入することを見出した。これにより軟骨前駆細胞の増殖活性が一時的に亢進し、続く血管の退行に伴って終末分化誘導が生じることが明らかとなった。そこで、近年我々が同定したヒト軟骨前駆細胞を用いて、このような発生過程における一過性血管侵入を再現する新規培養系の構築を試みた。驚くべきことに、血管内皮細胞との共培養により、軟骨前駆細胞はin vitroで自律的に三次元組織を構築することが明らかとなった。さらに、この三次元組織を移植に用いることで、従来のペレット移植法と比較して、高効率に弾性軟骨を再構築することが示された。本技術によれば、成長因子や足場材料を用いる必要がないことから、安全性やコストの面で極めて有益な弾性軟骨再構築技術になるものと期待される。将来的に、患者のHLA型と一致した血管内皮細胞と低侵襲で採取培養した軟骨前駆細胞と共培養させ、三次元組織化を誘導し移植することで、頭蓋・顎・顔面領域の先天奇形や外傷に起因する組織変形の新たな治療法を提供できると考えられる。
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