研究課題/領域番号 |
24659786
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
渡辺 太治 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (20448723)
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研究分担者 |
大場 謙吉 関西大学, 付置研究所, 研究員 (30029186)
中山 泰秀 独立行政法人国立循環器病研究センター, その他部局等, その他 (50250262)
神田 圭一 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (60295649)
田地川 勉 関西大学, 工学部, 講師 (80351500)
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キーワード | バイオチューブ / 生体内組織形成技術 / 小口径代用血管 |
研究概要 |
本研究では、自家細胞とマトリックス成分を用いて患者自身の体内において、自らの体内に移植するための代用臓器を自在に設計・誘導・再生するという、全く新しい着想に基づくD.I.Y.再生医療『生体内組織形成技術』の応用により、開発を進めている完全自家結合組織小口径代用血管バイオチューブの発展型として、吻合を行うことなく、動脈・静脈・リンパ管などのあらゆる微小脈管を再建するための“無吻合バイオチューブの開発を行うことを目的とした。今回開発予定の無吻合バイオチューブは、基材(鋳型)を特殊形状とする事により、(1)吻合予定の脈管内に鋳型を挿入し、(2)周囲からの自家結合組織形成誘導-カプセル化を行い、 (3)最終的に基材を抜去し、(4)吻合手技無しに2つの脈管を自家結合組織で接続する。分岐形状などに付 いても実験を計画しており、複数の脈管に対する複雑な同時血行再建に対応できる、分岐バイオチューブの作成 についても検証している。吻合することなく自己血管と一体化した代用血管が作成できれば、吻合による術中出血の心配なく、確実な血管同士の接続が可能となり、吻合部仮性動脈瘤や吻合部狭窄などの合併症を回避できる可能性が高く、非常に有意義であると考える。また、分枝形状の無吻合バイオチューブの作成はあらかじめ分枝を持ったバイオチューブが作成可能になるということであり、多枝バイパスを要する症例に対して、複数の分枝を吻合して作成する手間が省くことが可能となることを意味する。これにより、上述の利点に加え、大幅な手術時間の短縮につながる可能性があり、患者への手術侵襲を軽減につながれば多いに意義深いことであると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
・無吻合バイオチューブの作成:まづは、従来より使用していた、円柱状シリコン棒で無吻合バイオチューブの作成を試みた。ビーグル犬頸動脈、頚静脈に巾着縫合をおき、その中心を切開し、それぞれ3mm、5mmの基材を挿入し、挿入部を結紮し、基材を固定することとした。実験は3頭のビーグル犬で行った。1頭は左頚静脈に5mmの基材、1頭は左頸動脈に3mmの、左頚静脈に5mmの基材を、また、1頭には左右頚静脈に5mmの基材を1本づつ挿入した。この方法により、基材挿入部からの著明な出血は認めなかった。自己血管に出血や脱落をおこさず基材を刺入することは技術的には可能であることが証明された。 ・分岐バイオチューブの作成:シリコン素材によるY型、枝付きの基材の作成を行った。分枝型バイオチューブ作成用基材の作成は可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
前述の方法で基材の血管への刺入を行い、これを閉創し一定期間埋入することにより自家結合組織形成誘導-カプセル化がうまく惹起されれば宿主血管と一体化したバイオチューブの作成が可能となり、無吻合バイオチューブが作成出来る可能性が高まると考えられる。現在自家結合組織形成誘導-カプセル化がおこることを観察するべく、基材を埋入中である。2ー3ヶ月の埋入ののち、開創し、カプセル化がおこっていれば基材を取り出し、一体化された部位と反対側のバイオチューブを静脈、動脈に吻合し静脈ー静脈、動脈ー動脈、動脈ー静脈の接続を順次行っていく予定である。また、分岐型基材の植え込を行い、自己血管と一体化した分枝型バイオチューブの作成も同様に可能であるかどうかを検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主要な共同研究者が病気のため平成24年12月より平成25年9月まで動物実験を制限せざるを得なかっ た。このため予定していた研究にやや遅れが生じ、研究費の一部を翌年度に繰り越すこととなった。 平成24年10月より動物実験を再開しており、繰り越した研究費は主に実験動物の購入、飼育費用や動物実験時の麻酔薬などの薬品、血 管縫合糸やガーゼ、シーツなどの手術消耗品の購入に研究費を使用する。 また、本研究の成果を国内外での学会で発表するための旅費にも研究費を使用する予定である。
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