研究課題
本研究は、体内に存在する間葉系幹細胞の遊走制御を行うことを目的としている。近年、さまざまな組織において組織幹細胞が分離され、その細胞を用いた細胞移植治療が試みられている。この実現には、再生現象に関わる増殖能・分化能の高い幹細胞の生物医学的研究が重要であり、さらには細胞に生体組織の再生を誘導する手法も不可欠である。本研究では、組織幹細胞の中でも分化能と安全性の高い間葉系幹細胞を用いて、損傷を受けた際の間葉系幹細胞の遊走制御機構を解明する。ヒトが持つ治癒能力を解明することで、幹細胞移植治療の有効性を評価することができ、早期に医療への応用が実現可能な細胞移植方法を確立するはずである。フローサイトメーターにて分離したヒト間葉系幹細胞を、NOGマウスの眼下静脈叢(iv)より移植する。ヒト骨髄細胞を移植したNOGマウスに損傷(後背部位全層欠損層)を作成する。損傷を与えることで移植細胞が遊走する様子を、免疫組織染色にて組織学的に観察、またヒト細胞マーカーを指標にFACSを用いて定量化している。創傷部位への細胞の遊走が見られない場合も、電場変化やG-CSFを初めとする細胞動員を誘導する成長因子を投与して遊走する条件を探索している。電場による間葉系幹細胞の遊走活性をin vitroにて調べている。さらに局所および血中で変化するPDGFや、TGF-β、炎症系サイトカインをELISAで定量し、変動が見られた成長因子に対する間葉系幹細胞の遊走活性をin vitroにて調べた。また、前述の論文で明らかにされたシグナル伝達や電気走性応答(PI3KγやPTEN)に対するノックダウン、また遊走活性のあった成長因子に対する中和抗体を用いて、遊走現象が抑制されるかどうかを調べている。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、体内に存在する間葉系幹細胞の遊走制御を行うことを目的としている。近年、さまざまな組織において組織幹細胞が分離され、その細胞を用いた細胞移植治療が試みられている。この実現には、再生現象に関わる増殖能・分化能の高い幹細胞の生物医学的研究が重要であり、さらには細胞に生体組織の再生を誘導する手法も不可欠である。本研究では、組織幹細胞の中でも分化能と安全性の高い間葉系幹細胞を用いて、損傷を受けた際の間葉系幹細胞の遊走制御機構を解明する。ヒトが持つ治癒能力を解明することで、幹細胞移植治療の有効性を評価することができ、早期に医療への応用が実現可能な細胞移植方法を確立するはずである。本年度はヒト間葉系幹細胞を免疫不全動物へ移植し、高率よく体内動態を観察する系の確立に集中した。フローサイトメーターにて分離したヒト間葉系幹細胞にLuc遺伝子を導入し、NOGマウスの眼下静脈叢より全身移植後、IVISにて体外より細胞動態を経時的に観察したところ、継代培養を経て老化した細胞はほぼ全ての移植細胞が肺毛細血管に捕捉されてしまうため血中循環に入らず、その後の動態を追うことが不可能であることが判明した。そこで、別プロジェクトにて確立した手法を用い、移植前に遊走性を持つ細胞のみを分離し、ホストへ投与したところ肺毛細血管へ捕捉されずに体内循環させることが可能であった。分離の指標としたインテグリン受容体は、単なるマーカーであるのみならず、特異的抗体を用いて細胞間相互作用をブロックすることで遊走性が失われることから、間葉系幹細胞の遊走性に必須の分子であることが明らかになった。
平成25年度では、24年度に確立したヒト間葉系幹細胞体内動態モニタリングシステムを応用し、間葉系幹細胞が創傷治癒に関わる様子を非侵襲的・経時的に観察する。【遊走間葉系幹細胞のIn vivoイメージング】移植細胞が、マウスの組織内や体内でも識別できるように、ヒト間葉系幹細胞に対しレンチウィルスを用いてCBR(変異型ルシフェラーゼ遺伝子)を導入し、細胞に恒常的に発現させる。In vivoリアルタイムイメージング装置(IVIS)を用いて生体内での間葉系幹細胞の局在を体外から観察し、間葉系幹細胞の損傷部位への遊走を非侵襲的に確認する。電場変化・細胞外マトリックス等の投与によって、遊走能に現れる影響を観察し、間葉系幹細胞を用いた細胞治療法の有効性を証明する。
研究費は、実験動物購入、飼育費用、および実験に必要な試薬・プラスティック製品などの消耗品の購入に充当する。また、未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
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