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2012 年度 実施状況報告書

間葉系幹細胞の体内遊走機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24659789
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

松崎 有未  慶應義塾大学, 医学部, 准教授 (50338183)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード間葉系幹細胞 / 創傷治癒学
研究概要

本研究は、体内に存在する間葉系幹細胞の遊走制御を行うことを目的としている。近年、さまざまな組織において組織幹細胞が分離され、その細胞を用いた細胞移植治療が試みられている。この実現には、再生現象に関わる増殖能・分化能の高い幹細胞の生物医学的研究が重要であり、さらには細胞に生体組織の再生を誘導する手法も不可欠である。本研究では、組織幹細胞の中でも分化能と安全性の高い間葉系幹細胞を用いて、損傷を受けた際の間葉系幹細胞の遊走制御機構を解明する。ヒトが持つ治癒能力を解明することで、幹細胞移植治療の有効性を評価することができ、早期に医療への応用が実現可能な細胞移植方法を確立するはずである。
フローサイトメーターにて分離したヒト間葉系幹細胞を、NOGマウスの眼下静脈叢(iv)より移植する。ヒト骨髄細胞を移植したNOGマウスに損傷(後背部位全層欠損層)を作成する。損傷を与えることで移植細胞が遊走する様子を、免疫組織染色にて組織学的に観察、またヒト細胞マーカーを指標にFACSを用いて定量化している。創傷部位への細胞の遊走が見られない場合も、電場変化やG-CSFを初めとする細胞動員を誘導する成長因子を投与して遊走する条件を探索している。
電場による間葉系幹細胞の遊走活性をin vitroにて調べている。さらに局所および血中で変化するPDGFや、TGF-β、炎症系サイトカインをELISAで定量し、変動が見られた成長因子に対する間葉系幹細胞の遊走活性をin vitroにて調べた。また、前述の論文で明らかにされたシグナル伝達や電気走性応答(PI3KγやPTEN)に対するノックダウン、また遊走活性のあった成長因子に対する中和抗体を用いて、遊走現象が抑制されるかどうかを調べている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は、体内に存在する間葉系幹細胞の遊走制御を行うことを目的としている。近年、さまざまな組織において組織幹細胞が分離され、その細胞を用いた細胞移植治療が試みられている。この実現には、再生現象に関わる増殖能・分化能の高い幹細胞の生物医学的研究が重要であり、さらには細胞に生体組織の再生を誘導する手法も不可欠である。本研究では、組織幹細胞の中でも分化能と安全性の高い間葉系幹細胞を用いて、損傷を受けた際の間葉系幹細胞の遊走制御機構を解明する。ヒトが持つ治癒能力を解明することで、幹細胞移植治療の有効性を評価することができ、早期に医療への応用が実現可能な細胞移植方法を確立するはずである。
本年度はヒト間葉系幹細胞を免疫不全動物へ移植し、高率よく体内動態を観察する系の確立に集中した。フローサイトメーターにて分離したヒト間葉系幹細胞にLuc遺伝子を導入し、NOGマウスの眼下静脈叢より全身移植後、IVISにて体外より細胞動態を経時的に観察したところ、継代培養を経て老化した細胞はほぼ全ての移植細胞が肺毛細血管に捕捉されてしまうため血中循環に入らず、その後の動態を追うことが不可能であることが判明した。そこで、別プロジェクトにて確立した手法を用い、移植前に遊走性を持つ細胞のみを分離し、ホストへ投与したところ肺毛細血管へ捕捉されずに体内循環させることが可能であった。分離の指標としたインテグリン受容体は、単なるマーカーであるのみならず、特異的抗体を用いて細胞間相互作用をブロックすることで遊走性が失われることから、間葉系幹細胞の遊走性に必須の分子であることが明らかになった。

今後の研究の推進方策

平成25年度では、24年度に確立したヒト間葉系幹細胞体内動態モニタリングシステムを応用し、間葉系幹細胞が創傷治癒に関わる様子を非侵襲的・経時的に観察する。
【遊走間葉系幹細胞のIn vivoイメージング】
移植細胞が、マウスの組織内や体内でも識別できるように、ヒト間葉系幹細胞に対しレンチウィルスを用いてCBR(変異型ルシフェラーゼ遺伝子)を導入し、細胞に恒常的に発現させる。In vivoリアルタイムイメージング装置(IVIS)を用いて生体内での間葉系幹細胞の局在を体外から観察し、間葉系幹細胞の損傷部位への遊走を非侵襲的に確認する。電場変化・細胞外マトリックス等の投与によって、遊走能に現れる影響を観察し、間葉系幹細胞を用いた細胞治療法の有効性を証明する。

次年度の研究費の使用計画

研究費は、実験動物購入、飼育費用、および実験に必要な試薬・プラスティック製品などの消耗品の購入に充当する。
また、未使用額の発生は効率的な物品調達を行った結果であり、翌年度の消耗品に充てる予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Twist2 functions as a tumor suppressor in murine osteosarcoma cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Ishikawa T, Shimizu T, Ueki A, Yamaguchi SI, Onishi N, Sugihara E, Kuninaka S, Miyamoto T, Morioka H, Nakayama R, Kobayashi E, Toyama Y, Mabuchi Y, Matsuzaki Y, Yamaguchi R, Miyano S, *Saya H.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 104(7): ページ: 880-8

    • DOI

      10.1111/cas.12163.

  • [雑誌論文] Mesenchymal stem cells regulate epithelial-mesenchymal transition and tumor progression of pancreatic cancer cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Kabashima-Niibe A, *Higuchi H, Takaishi H, Masugi Y, Matsuzaki Y, Mabuchi Y, Funakoshi S, Adachi M, Hamamoto Y, Kawachi S, Aiura K, Kitagawa Y, Sakamoto M, *Hibi T.
    • 雑誌名

      Cancer Sci.

      巻: 104(2): ページ: 157-64

    • DOI

      10.1111/cas.12059.

  • [雑誌論文] Isolation of mouse mesenchymal stem cells on the basis of expression of Sca-1 and PDGFR-α.2012

    • 著者名/発表者名
      Houlihan DD, Mabuchi Y, Morikawa S, Niibe K, Araki D, Suzuki S, Okano H, Matsuzaki Y.
    • 雑誌名

      Nat Protoc.

      巻: 7 ページ: 2103-11

    • DOI

      doi: 10.1038/nprot.2012.125.

  • [雑誌論文] Transplantation of side population cells restores the function of damaged exocrine glands through clusterin.2012

    • 著者名/発表者名
      Mishima K, (他15名), Matsuzaki Y, Tsubota K, Saito I.
    • 雑誌名

      Stem Cells.

      巻: 30 ページ: 1925-37

    • DOI

      doi: 10.1002/stem.1173.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Discovering the true identity and function of mesenchymal stem cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Mabuchi Y, Houlihan DD, Okano H and Matsuzaki Y
    • 雑誌名

      Inflammation and Regeneration

      巻: 32 ページ: 146-151

    • DOI

      doi: 10.1002/stem.1173.

    • 査読あり
  • [学会発表] 間葉系幹細胞の体内動態と慢性炎症惹起メカニズム2013

    • 著者名/発表者名
      松崎有未
    • 学会等名
      第12回日本再生医療学会学術集会
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20130321-23
  • [学会発表] フローサイトメトリーによる間葉系幹細胞の分離2012

    • 著者名/発表者名
      松崎有未
    • 学会等名
      日本免疫学会総会学術集会
    • 発表場所
      神戸
    • 年月日
      20121205-07
  • [学会発表] Minor antigen-mismatched MSC react with residual host T cells to trigger the progression of chronic GVHD2012

    • 著者名/発表者名
      Yumi Matsuzaki
    • 学会等名
      International Society for Stem Cell Research 10th Annual Meeting
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      20120612-15

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公開日: 2014-07-24  

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