研究課題/領域番号 |
24659794
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
古川 宗 東北大学, 大学病院, 助教 (30624853)
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研究分担者 |
中川 敦寛 東北大学, 大学病院, 助教 (10447162)
鷲尾 利克 独立行政法人産業技術総合研究所, ヒューマンライフテクノロジー研究部門, 研究員 (40358370)
久志本 成樹 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50195434)
荒船 龍彦 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50376597)
小宮 敦樹 東北大学, 流体科学研究所, 准教授 (60371142)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 体温異常 / 災害医療 |
研究概要 |
平成24年度は体温異常患者の転帰を明らかにすることを主眼に置いた。東日本大震災では宮城県内の多くの災害拠点病院に患者が殺到し、職員は忙殺された。しかし忙殺された業務内容は従来想定されていた災害急性期の多数発生した外傷患者に対する診療ではなく、環境異常による低体温や溺水、津波によって全てを失った患者が服薬を継続できなくなったことによる持病悪化、脳卒中や心筋梗塞に対する診療が主であった。低体温症患者の転帰について明らかにすることを目的とした我々の調査では(現在Disaster Medicine and Public Health Preparedness誌に投稿中)、暖房設備が使用できない中、多くの入院患者は毛布被覆によって復温を行ったが、転帰は良好であった。また、32度~35.9度までの軽度低体温症患者と低体温症予備群が圧倒的多数を占めており、これらの入院患者診療を新しいデバイス開発により病院外診療を可能にすることで、災害急性期の病院負担軽減可能であることをより明確に示すことができた。これが実現すれば急性期災害医療の負担軽減に大きく貢献することができる。また、今後の災害医療のあり方について意見交換するため、危機管理の先進国であり、さらにしばしば災害に遭遇する米国西海岸の識者との意見交換を行った(2012年6月カリフォルニア州サンフランシスコ・サクラメント他)。この中で東日本大震災における我が国の対応は、個人の活動は非常に献身的で素晴らしいものであったが、組織的な対応としては課題が残るというのが海外の評価であった。低体温症患者に限らず、東日本大震災で問題となった点について明らかにし、情報発信していき、新たな災害対応方法の確立やデバイスの開発を我が国が行っていくことが海外からのニーズであることが明確となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
東日本大震災における体温異常患者の転帰を宮城県全体で調査したことにより、当初の目的である体温調節機器開発のニーズが高いことが判明した点は、研究開始前より明確になった。また、今回の調査結果を論文や学会発表という形で業績を残すことができた。これらについては研究目的を達成していると考える。一方で、これらのニーズに応えるための無あるいは最小限のエネルギーを用いた体温調節機器開発に向けた素材選定・モデル開発・動物実験データ収集についてはこれからの目標達成課題である。以上より、本研究課題の達成度は「やや遅れている」とした。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は,東日本大震災においての検証の中で、体温異常に対する新たな機器開発が患者転帰の改善・急性期災害医療の負担軽減・産業創成のいずれにもつながるということをより明確にした。今後はこのニーズに応えるための新たな体温調節機器の開発に向けた基礎実験を行う。 具体的には、動物モデルを用いた評価系の構築し、温度・湿度を任意に可変可能なゲージを製作、ラット動物モデルにおけるベースラインデータを取得する。温度幅 0~40度、湿度幅 20~100%の中で調節し、基礎データを得る。上記実験系のため、温度計、湿度計、赤外線画像装置、オシロスコープを使用する。 加工素材の効果の検討動物モデルに候補となった加工素材で被覆することによる温度幅を計測し、加工素材の保温効果を検証する。また、微小環境のモジュレーションの検討のため、加工素材の冷却効果についても動物モデルを用いて検討を行う 以上の動物実験データから、臨床で検証可能な素材・機器の絞り込み、機器開発へつなげる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、当初計画していた動物モデルを用いた評価系の構築、基礎実験によるデータ収集を次年度に延期することにより生じたものであり、平成25年度請求額と合わせて使用する予定である。
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