研究課題
2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、われわれは災害診療の質の向上を目指して横断的に調査を行ってきた。平成24年度は低体温症患者調査により、比較的軽症で必ずしも入院を必要としない患者が多数存在したことを報告した(詳細は現在Disaster Medicine and Public Health Preparedness誌に投稿中)。平成25年度はさらに災害時における病院機能維持(Business Continuity Plan)に着目し、病院調査や識者と意見交換した。この中で、災害対策は災害発生時に特別なことをやるのではなく、安全点検や機器点検、患者診療といった日常業務がそのまま災害時に活かすことができるように業務内容を工夫していくことが重要であることが明らかになった。診療機器の観点からは、平常時や災害時であろうと関係なく使い慣れた機器が使用できることが重要であるということがより明確となった。体温調節デバイスは体温維持系(低下の防止)と冷却系に分け、それぞれにおいて実験をおこなった。体温維持系については電気等のエネルギーを極力使用しない体温保持デバイスの試作をおこなった。材質選定・加工については材料工学の見地から素材を選定した。形状は完全に身体を被覆するのがもっとも保温効率が良いが、一方で処置などの患者への介入時に邪魔にならないような形状を両立させる必要があった。この点については当施設の救急科専門医に日常診療での使用上の問題点といった意見を聞きながら細かい仕様について決定した。冷却系は災害時を勘案し、乗用車のバッテリー(12V)程度の電源で駆動する冷却装置を試作した。現在、これらのデバイスの保温機能や冷却機能の基礎データを収集中である。今後は体温34~39度程度の患者を想定し、どの程度の体温調節機能を有するかを検証する予定である。
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IEEE Pulse
巻: 4 ページ: 20-27
10.1109/mpul.2013.2250851