「髄液をNMR計測し、パターン認識によるデータ解析を行う」という検査を実施することにより、1)重症化する可能性がある脳症や髄膜炎、2)重症化する危険性は低い熱性けいれん(単純型・複雑型)、3)その他の熱性疾患、を鑑別することが可能かどうかを検討した。 「発熱を伴って救急外来を受診した小児のうち、入院の適応があり、かつ脳症や髄膜炎の鑑別診断が必要と判断された症例」において、入院直後に髄液を採取し、その髄液135検体について以下の分析を行った。 患者毎に、髄液検査データ、血液・生化学検査データ、画像所見、けいれんの有無、予後等について、臨床情報を整理した。患者から採取した髄液は、遠心分離により細胞成分を除去し、-80℃に保存した。髄液を解凍後、内部標準物質等を加えてNMR試料管に入れ、7 テスラFT-NMR装置にて、プロトン、CPMG スピンエコー法による計測を行った。 得られたNMRデータは、一定の処理を行なった後、数値化ファイルとして保存した。数値化されたNMRデータを多変量解析用のソフトウェアに取り込み、パターン認識による解析を行った。主成分分析(PCA)をベースに、PLS-DA、SIMCA法等による解析を行なった。 髄液のNMR解析データと臨床情報との関連付けを行い、1)細菌性髄膜炎とウイルス性髄膜炎の鑑別は可能か、2)急性脳症・熱性けいれん(複雑型)、熱性けいれん(単純型)、髄膜炎(細菌性・ウイルス性)を、他の種々の熱性疾患(急性上気道炎、尿路感染症、他)から識別することが可能か、について検討した。
|