研究概要 |
培養血管内皮細胞上のトロンボモジュリン(TM)分子のN末端レクチン様ドメインにはDAMPs:HMGB1, histones が, PAMPs:エンドトキシン(LPS) が結合して、それぞれそれらの活性を制御した。そこで今回の研究では特にHMGB1 のダイナミズムについて研究した。TMのN末端のレクチン様ドメインに結合したHMGB1 は、トロンビン・TM 複合体によって、N末端のArg(10)-Gly(11) 部位で切断され、HMGB1 は遊離されて、活性の低下したdes-HMGB1 が生成された。このdes 体はintact HMGB1 の受容体(RAGE, TLRs-2,-4) への結合を阻害したことから、体内ではHMGB1 とその受容体系のネガティブフィードバック系を形成しているものと推定された。そこでこのdes-HMGB1を即位的に認識するELISA を樹立した。このアッセイ法は90%のdes-HMGB1を検出したが、10%はintact HMGB1 がコンタミネーションを起こしていた。本方法で諸疾患、特に遺伝子組換え体のTMで治療された患者の血中のdes-HMGB1した。遺伝子組換えTM投与で、速やかに des-HMGB1 が上昇する患者検体が観られた。しかし遺伝子組換えTMの投与でもdes-HMGB1 の上昇しない症例、あるいはただちに低下する例などが観察され、遺伝子組換えTM治療に対し、レスポンダーと非レスポンダーがあること、あるいはdes-HMGB1 の体内ターンオーバーの個体差の存在が推定された。
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