研究概要 |
本年度の研究では、現在広く用いられている衛星電話にウエブやインターネットが行える機能を持たせることで、それが災害対応時のコミュニケーションのツールとして実用性があるかを検証することである。昨年度に行った東日本大震災での連絡体制の実態に関するアンケート調査では、衛星電話の回線が繋がらない、通信の安定性が悪い、操作性が悪いなどの問題点も解った。この問題を解決する目的で、平静25年度は衛星電話ワイドスターII(NTT docomo)にWi-Fiルータを接続し、衛星電話から複数のコンピュータやスマートフォンの接続ができるシステムを構築して、その通信速度を測定した。まず、室外での受信レベル CNR (Carrier to Noise Ratio: dB) を9dB, 7dB, 5dBと変化させて通信速度を測定した。下り速度は、9dBで122~138 Kbps (16KB/sec), 7dBで65~94 Kbps (12 KB/sec), 5dBで36~49 Kbps (4 KB/sec)と、電波の受信レベルが悪くなるとともに、通信速度も低下した。一方、上り速度は、200KBの容量データを送信した場合9dB, 7dB, 5dBのいずれの受信レベルでも、30 Kbpsで送信時間は52秒と安定していた。次に室内(ガラス越しにアンテナを設定)の場合、下りの速度は室外の時と差はなかった。上りの速度は200KBの容量データの送信した場合9dB, 7dB, 5dBのいずれの受信レベルでも、11 Kbps で送信時間は136秒かかり、室外のときに比べて送信時間の延長を認めた。 以上の結果から、災害時に衛星電話を用いインターネット回線を利用したデータ通信は可能であるが、その通信速度は遅いためリアルタイムでの通信は限界がある。しかし、瞬時の通信を必要としないデータ通信には有用であると考えられた。
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