本年度は、現在広く用いられている衛星電話にウエブやインターネットが行える機能を持たせることで、それが災害対応時のコミュニケーションのツールとして実用性があるかを検証することである。研究は衛星電話にWi-Fiルータを接続して使用した場合の通信特性を調べるために、受信レベル CNR (Carrier to Noise Ratio)と測定地点の標高を変化させた場合、通信速度に相違が生じるかについて調べた。その結果、標高50mの地点での受信速度は、CNRが低くなるとともに遅くなった。一方、200KBのデータを送信した速度は、CNRに関係なく30 Kbpsで安定していた。標高毎の受信速度の違いを検証する調査では、標高100mと200mでの測定で測定した場合は、CNRの低下による速度低下はなく受信速度は安定していた。次に各標高における送信可能容量を調べたところ、標高50mでCNRが9dBの時には、400KB までのデータを送信することが可能で、CNRが低くなると送信可能なデータ容量の減少を認めた。また、標高100mの測定では、50mの時に比べて、CNR毎の送信できる容量は増加し、9 dBで500 KBのデータ送信が可能であった。標高200mでも同様であり、CNRが9dBで600KBのデータ送信が可能であった。 以上から、使用場所の標高が高いと、電波状況に関係なく安定した受信速度が得られ、電波状況が悪くても送信可能な容量が大きくなった。この要因として、標高が低い場所は高い場所に比べて、障害物があること、複数の波長が違う電波が存在すること、などが衛星電話の通信状況を悪くしている要因と考えられた。今回の検討で、衛星電話にWi-Fiルータを接続した通信は、CNRレベルや使用場所の標高により受信、送信時の通信速度や通信容量に違いがあった。そのため、災害時に使用する場合には、これら通信環境の特性が考慮する必要があると考えられた。
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