研究課題/領域番号 |
24659802
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
田中 裕 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90252676)
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研究分担者 |
岩渕 和久 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10184897)
杉中 宏司 順天堂大学, 医学部, 助手 (30510424)
角 由佳 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40403084)
森川 美樹 順天堂大学, 医学部, 助手 (40621892)
石川 浩平 順天堂大学, 医学部, 助手 (50621900)
井上 貴昭 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (60379196)
荒木 慶彦 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (70250933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 多臓器不全 / 敗血症 / 心肺停止蘇生後 / DIC / DAMPs / ATP / 白血球機能 |
研究概要 |
1)侵襲時のDAMPsの定量化に関する研究。 敗血症や心停止蘇生後(全身性虚血・再灌流障害)における血漿中adenylates(ATP, ADP, adenosine)の測定系をHPLCを用いて確立した。敗血症患者および心肺停止後蘇生に成功した患者を対象に測定を行った。その結果、敗血症患者では健常者に比し炎症を惹起するATPが高値で、抗炎症作用をもつadenosineが有意に低値であった。ATPの上昇と並行して白血球活性化の指標であるCD11bは高値を示した。一方多臓器不全を呈した最重症例ではATPが低値となった。この結果は敗血症時にはATPがダメージを受けた細胞から大量に放出され白血球の活性化に関与する一方、多臓器不全の状態ではATPは枯渇しており、細胞内ミトコンドリア機能不全との関与が示唆された。 心肺停止蘇生後の状態ではATPが高値を示し、血中乳酸値や心肺停止時間(虚血時間)と正の相関が認められた。再灌流障害におけるATPの関与について今後検討を進める。 2)DIC時の白血球活性化とレオロジー、薬物の効果 多臓器不全の病態としてDICに着目し、白血球活性化の指標として白血球変形能とDICの相関性を明らかにした。敗血症患者のうちDICに陥った症例を対象に、白血球変形能をMCFANを用いて定量評価した。また、白血球の活性化の指標としてCD11bを評価した。その結果、急性期DICスコアと白血球変形能は有意な相関を認めた。また白血球変形能と活性化の指標であるCD11bにも有意な相関を認めた。以上より、炎症の惹起に伴う好中球の活性化はDICの発症と重症化に密接に関連していることが明らかとなった。また、白血球変形能はベッドサイドで容易に測定が可能であり、DICの重症度評価や治療効果判定に有効で簡便なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)侵襲時のDAMPsの定量化に関する研究では、測定系の確立と各種病態での測定はすでに開始されている。今後はさらに症例数を増やす必要がある。2)蛋白分解酵素および活性酸素産生がDAMPs産生に及ぼす影響に関する研究では、心肺停止蘇生後の病態でDAMPsのうちATPの測定を開始しており、前述した結果が得られている。さらに同病態における活性酸素の産生ならびに抗酸化状態の評価も行っている。一方、ATPの産生にどのように活性酸素の産生や蛋白分解酵素が関与するかについては、今後の検討が必要である。3)白血球、血管内皮とDAMPsのクロストークに関する研究では、血管内皮細胞障害と白血球、DAMPsのクロストークに関する研究を行い、実績概要で記載した通り炎症の惹起に伴う好中球の活性化はDICの発症と重症化に密接に関連していることを明らかにした。また、白血球変形能はベッドサイドで容易に測定が可能であり、DICの重症度評価や治療効果判定に有効で簡便なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。今後はDIC病態における白血球変形能に対するDAMPs(ATP)の関与について検討を要すると考える。4)薬物や血液浄化によるDAMPs除去効果の検討では、すでに敗血症、DIC、心肺停止蘇生後におけるDAMPs測定、白血球活性化の検討は開始されている。しかし、各種病態における薬物によるDAMPs除去効果の検討ならびに白血球の活性化の制御の可能性に関する検討については、今後さらに症例数を増やして検討していく必要がある。 5)現在基礎研究は準備段階であり、今後基礎研究を進める必要がある。基礎研究の進捗状況としては、好中球からのATPの局在を共焦点レーザー顕微鏡を用いて評価する測定系を構築している。さらに、ATPの細胞内定量化を行い、ミトコンドリア機能不全を証明する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
1.症例を重ねて、DAMPsとしてのATPの時間的変化と白血球活性化の相関関係を明らかにする。2.DAMPsを介した多臓器不全時のミトコンドリア機能不全を証明する。3.ATPの産生にどのように活性酸素の産生や蛋白分解酵素が関与するか、検討を進める。4. 血管内皮細胞障害としてのDIC病態における白血球変形能に対するDAMPs(ATP)の関与について検討を進めていく。5.各種病態における薬物によるDAMPs除去効果の検討ならびに白血球の活性化の制御の可能性に関する検討を、今後症例数を増やして検討していく。 6.基礎研究では、好中球からのATPの局在を共焦点レーザー顕微鏡を用いて評価する測定系を確立し、ATPの細胞内定量化を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.得た研究成果を関連学会(日本救急医学会、アジア救急医学会、日本集中治療学会、炎症・再生学会、国際ショック学会、米国外傷外科学会など)に参加し発表していく。 2.測定試薬の購入。ATPの測定、白血球活性化マーカー(CD11b、顆粒球エラスターゼ)に関する試薬の購入ならびに、HPLCやフローサイトメトリ関連の試薬の購入に使用する。3.細胞分離の試薬購入。共焦点レーザー顕微鏡にて白血球のATP局在を評価するための、細胞分離、蛍光試薬などを購入する。4.マウスを用いた敗血症モデル作成を行うため、動物購入ならびに実験関連の機器などの購入を行う。5.実験補助(データ整理)に対する賃金に使用する。
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