研究課題/領域番号 |
24659807
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
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研究分担者 |
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
樋田 京子 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 特任准教授 (40399952)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 癌微小環境 / EMT / CAF |
研究概要 |
口腔がんの腫瘍周囲環境が腫瘍の発生、増殖、浸潤、転移等の悪性化に関与する因子を検索することを目的に研究を行った。副甲状腺関連タンパクPTHrPは乳がんや前立腺癌の骨転移において重要な役割を果たすことが知られている。口腔がん細胞でもPTHrPが高発現していることを我々は見いだした。さらに実際の口腔がん患者でPTHrP陽性率と腫瘍の転移・再発に有意な相関があることも明らかにした。腫瘍間質に存在する線維芽細胞は腫瘍血管と同様に正常細胞とは異なった形質を発現していることが報告され、cancer-associated fibroblast (CAF)と称されている。口腔領域に発生する粘表皮がんで検索したところ、PTHrPを高発現する粘表皮がんの中間細胞集にCAFが多くみられ、さらに新生血管が豊富に存在し、PTHrP発現腫瘍細胞の悪性形質との関連が示唆された。線維芽細胞株MRC5をPTHrP高発現細胞株HSC2の上清を加えたMRC5では明らかな増殖活性の亢進がみられた。PTHrPsiRNA導入HSC2細胞ではPTHrPのmRNA発現が低下していることが示され、PTHrPノックダウンHSC2細胞培養上清を加えたMRC5細胞は増殖活性の減弱がみられた。さらに通常培養ではαSMAの発現がほとんどみられないMRC5、DP31、DP36をPTHrP産生癌細胞上清で培養したところ、線維芽細胞株でαSMAの発現が亢進することがWestern blotであきらかになり、PTHrPによる周囲間質に存在する線維芽細胞のがん関連線維芽細胞(CAF)への誘導効果が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画に沿って、概ね順調に研究は進行しており、論文発表3件、学会発表を3回行っている。
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今後の研究の推進方策 |
口腔環境とがんの悪性形質との関連性について、異なった環境で増殖した腫瘍間の遺伝子発現の差をDNAマイクロアレイにより検索し、Western blotならびに蛍光免疫染色で確認を行う。さらに、EMTが生じているかどうかについて、E-cadherin、 N-cadherin、Vimentinの発現をWestern blotおよび免疫染色で比較検討する。次いで、TWIST、SNAILなどの転写因子の発現について検討する。Wnt シグナル伝達系についてβカテニンの細胞内蓄積の有無について検索し、細胞内にβカテニンの蓄積がみられる場合はユビキチン化の有無を検討する。 北海道大学病院歯科診療センターを受診し、扁平上皮がんと診断された患者からの試験切除標本ならびに手術摘出材料からタンパクおよびRNAを抽出し、病理組織学的ならびに臨床的に腫瘍の悪性度を判定し。悪性度とRANKL発現が実際に相関しているかどうかをWestern blot、real-time RT-PCR法および免疫染色で確認する。口腔環境下でRANKLを誘導する受容体に対する阻害剤を作用させ、その阻害効果を検証する。JAK/STAT系を発現している細胞ではリン酸化阻害剤と中和抗体を用いて阻害効果を検討し、ケモカイン受容体型やWntシグナル伝達系に対してはsiRNAによる抑制効果を実験的に行い、口腔がん細胞において最も抗腫瘍効果を示した阻害剤と受容体の組み合せを選定する。さらに、ヌードマウス、あるいはウサギに口腔がん細胞を移植し、培養条件下で明らかになった受容体阻害剤を投与し、in vivo imagingの手法を用いて各種阻害剤の効果を比較検討し、臨床応用への道を探る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の一部が次年度にかけて行うことになったため、繰越金が発生した。本年度に一括して使用する予定である。
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