研究課題/領域番号 |
24659808
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
網塚 憲生 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30242431)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | PTH / PTHrP / 骨芽細胞 / 歯学 / 細胞組織 / PTH/PTHrP受容体 |
研究概要 |
主要な骨代謝調節因子である副甲状腺ホルモン(PTH)および副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)は、共通の受容体(PTH/PTHrP受容体: PTH-R)に結合する。本研究計画では、PTHは前骨芽細胞優位に作用し破骨細胞形成と血中カルシウム濃度を調節する全身性因子として、一方、PTHrPは骨髄ストローマ細胞優位に作用し骨髄細胞のニッチェ形成を行う局所因子として作用する可能性を見いだした。その解明に向けて、PTHrP過剰産生Tgマウス(胎生期)とPTH投与マウス(成獣期)を用いて、in vivoで組織学的解析した。軟骨細胞特異的PTHrP過剰産生Tgマウスは軟骨からの過剰なPTHrP産生が骨組織の細胞に作用し、その結果、線維芽細胞様細胞(前骨芽細胞および骨髄間質細胞)の細胞増殖が亢進していた。ところが、これらの細胞は成熟型の骨芽細胞にまでは分化せず、骨基質合成や基質石灰化をほとんど誘導しなかった。一方、PTH間歇投与を4回/day, 2回/day, 1回/day, 1回/2dayの頻度でPTH投与量を変えて行ったところ、PTH頻度回数が高い場合は前骨芽細胞が増加し、また、成熟型骨芽細胞が活発に骨基質合成を行うリモデリングが上昇していたこと、一方、投与頻度が少ない場合、成熟型骨芽細胞が骨基質合成を行うが前骨芽細胞の数は増加しないミニモデリングが主に誘導されることが明らかにされた。これらの結果は、同じ受容体に作用するPTHとPTHrPであるが、その作用に若干の違いがあること、また、作用の仕方(投与頻度や投与量)によって骨リモデリングなのかミニモデリングなのか、骨形成の様式が異なることが強く示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、PTHは前骨芽細胞優位に作用し破骨細胞形成と血中カルシウム濃度を調節する全身性因子として、一方、PTHrPは骨髄ストローマ細胞優位に作用し骨髄細胞のニッチェ形成を行う局所因子として作用する仮説が正しいか明らかにするために、in vivoのモデル動物を作製して解析にあたった。以前から徐々に本研究の準備をしていたため、平成24年度ではPTHrP過剰産生Tgマウス(胎生期)とPTH投与マウス(成獣期)をin vivoで組織学的解析した結果、上記に記したように、詳細な組織変化を明かにすることができた。また、それだけでなく、実験期間の総投与量を一定にしておき、PTH投与の頻度回数を上げると骨リモデリングが亢進し前骨芽細胞の増殖亢進と骨芽細胞による骨形成亢進を示すが、投与回数を下げた場合、前骨芽細胞の増加を伴わないミニモデリングを認めることができた。この結果は、当初予想していなかったことであり、大きな研究成果と考えられる。しかし、このような結果が出てきたため、PTHの投与頻度が異なるとどのようなメカニズムでリモデリングとミニモデリングが誘導されるのか、その細胞学的なメカニズムまでには至っていない。従って、次年度は当初予定していた計画に加えて、リモデリングとミニモデリングの誘導メカニズムを遂行したい。以上のことを踏まえて、おおむね研究計画は達成したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度では、前骨芽細胞、骨髄間質(ストローマ)細胞、骨芽細胞といった細胞腫によってPTHまたはPTHrPのどちらの作用を強く受けるという解決方策ではなく、細胞膜のPTH/PTHrP受容体(PTH-R)がリガンド(PTH, PTHrP)の結合でコンフォメーションならびにdimerからmonomerになるときにシグナル伝達を行うと考えられるが、そのときのPTHとPTHrPの結合が異なるために、それらの作用が相違する可能性を検索する。研究の方法としては、各分化段階の骨髄ストローマ細胞→前骨芽細胞培養細胞にPTH-R-HA, PTH-R-Flagを共発現し(右図)、PTHまたはPTHrPで刺激しcAMP産生を計測する。また、P132L変異を有するBlomstrand型PTH-Rはシグナルを通さないことから、wild type PTH-RとP132LPTH-Rの共発現で同様の実験を行う予定である。現在、平成25年度の基礎実験を得ており、本格的な研究を進めてゆく。また、平成24年度で得られたPTHの投与方法におけるリモデリングとミニモデリング誘導のメカニズム、およびPTHrP Tgマウスの論文化に向けた最終的な所見の詰めについても、随時、検索を深めてゆく予定である。これらの結果は平成25年度の後半には論文にまとめて提出したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度内(平成25年3月31日)までにほぼ当初の計画どおりに使用し、納品済み であるが、金額の支払いが平成25年4月となったものがあったため、平成24年度 未使用額が発生した。 この未使用額については、平成24年度中にほぼ計画どおりに使用したため、 次年度の使用計画に変更はない。
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