研究課題/領域番号 |
24659819
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
菊池 和子 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (40326690)
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研究分担者 |
藤原 尚樹 岩手医科大学, 歯学部, 講師 (20190100)
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (60509066)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | iPS細胞 / 奇形種 / 歯 / 再生 |
研究概要 |
人工多能性幹細胞 (iPS細胞) はマウスの皮下に移植すると奇形腫を作ることが知られている。しかし、この奇形腫では、本来生体に発生する卵巣奇形腫と異なり、歯や毛の器官形成がみられない。そこで、我々はiPS細胞由来の奇形腫の発生、成長過程における遺伝子発現と、本来の歯の発生における遺伝子発現とを比較検討することで、なぜiPS 由来奇形腫に歯が発生しないかを解明すると共に、歯の器官発生に必須な初期遺伝子の発見に努める。また、それらの遺伝子群が発見できればiPS由来の奇形腫に遺伝子導入し、歯の発生を誘導できるかを検討することでiPS細胞を用いた器官再生医療研究の糸口にしたいと考えた。 本年度は奇形腫の成長過程をより詳細に検索し歯の幹細胞が発生する時期を特定することと、in vitroにおけるiPS細胞の分化能を明らかにすることを目標として①iPS細胞のヌードマウスへの移植条件についての検討 ②歯胚発生イメージング用のiPS細胞の作製 ③奇形種内の幹細胞マーカー発現解析 ④iPS細胞から間葉系幹細胞への分化誘導法の確立と骨分化能の解析を行った。①ではiPS細胞移植にもちいるスキャホールドとしてコラーゲンゲルが有効であること、実験期間(4週間)にもっとも適した細胞数が1x10^6個であることがわかった。②ではアメロゲニン,DSPプロモーターの下流にルシフェラーゼ遺伝子をつないだプラスミドを作製することを試みた。③では奇形種内に発現する上皮幹細胞マーカ(CK14,p63,CD49fなど)、間葉系幹細胞マーカー(STRO-1, CD73, CD90)の発現を確認した。④ではiPS細胞から神経堤細胞への分化誘導法を確立し、その細胞が間葉系幹細胞様細胞、更には骨芽細胞、脂肪細胞、軟骨細胞へと分化する能力を持つことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請書において1)奇形腫の成長過程をより詳細に検索し、歯の幹細胞が発生する時期を特定する。2)iPS奇形腫と歯の成長過程における遺伝子, miRNA発現を網羅的に検索し、歯の器官発生に必要な遺伝子群の中で、奇形腫に発現していないものを同定する。3)1)、2)の結果を基に遺伝子導入の最適な時期、さらに導入する遺伝子群の候補を決定する。4)iPS細胞由来の奇形腫に効果的に遺伝子を導入する方法を確立する。ことを目標に掲げ研究を行ってきた。本年度はそのうちの1)の目標はほぼ達成されたと考えているが、それ以外目標は完全には達成されていない。その理由として奇形種における遺伝子の網羅的解析が予定した通りに進んでいないこと、遺伝子導入のためのプラスミド作製が難航していることがあげられる。これらを解決し研究を前に進めることが急務であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの達成度のところで記したように、技術的な問題として奇形種における遺伝子の網羅的解析が予定した通りに進んでいないこと、遺伝子導入のためのプラスミド作製がうまくいっていないことから、まずこの点を解決することを最優先として研究をおこなう。また同時進行として、奇形種への遺伝子導入の方法を確立すべく、GFPやDsRedのコントロール用発現ベクターを用いて、1) in vivo 遺伝子導入試薬, 2) 徐放性ビーズ、3) 超音波を用いた遺伝子導入、4) エレクトロポレーション法を検討していく。以上を組み合わせて歯の発生を誘導する技術を確立していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費の大部分は実験のための消耗品の購入にあてる。また研究の成果を発表するため、学会参加費と論文作製のための諸経費にあてる予定である。
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