研究課題/領域番号 |
24659821
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
泉福 英信 国立感染症研究所, 細菌第一部, 室長 (20250186)
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研究分担者 |
中尾 龍馬 国立感染症研究所, 細菌第一部, 研究員 (10370959)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アミロイド / S. mutans / S, gordonii / バイオフィルム / 遺伝子 / コンゴ―レッド / 異常タンパク質 / 病原性 |
研究概要 |
口腔バイオフィルム形成はスクロースを糖源とする代謝系が中心となっているが、実際はスクロースに依存しないバイオフィルム形成メカニズムも存在している。菌体表層アミロイドは、近年Bacillus subtilisのバイオフィルム形成に大きく関わることが明らかとなった。TasAがその重要な遺伝子として明らかとなり、う蝕原因菌であるStreptococcus mutansや初期付着菌Streptococcus gordoniiにも相同性の高い領域が存在していた。口腔バイオフィルム形成にこの菌体表層アミロイドが関与する可能性が高く、本研究ではバイオフィルム形成におけるアミロイドの関わりについて詳細に明らかにすることを目的として実験を行った。TasAの遺伝子シークエンスと相同性の高いう蝕原因菌であるS. mutansの遺伝子SMU1035に加え、SMU482, SMU484のUA159ミュータント株を作成し、それぞれのミュータントをコンゴ―レッドで着色させて偏向顕微鏡にて観察した。その結果、SMU482のミュータント株では、親株であるUA159に比べアミロイド形成が上昇する傾向が認められた。SMU482ミュータント株は、UA159に比べ凝集性も高くさらにextracellular DNAに依存したバイオフィルム形成が高まった株である。SMU482は細胞壁の構成に関わっている可能性が考えられ、アミロイドの形成上昇がこのような凝集やextracellular DNAに依存したバイオフィルム形成の上昇に関わっている可能性が考えられれる。SMU482のアミロイド形成における役割や他の遺伝子によるアミロイド形成への関わりを検討し、アミロイドがバイオフィルム形成ならびS. mutansの病原性にどのように関わっていくか今後検討していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アミロイドに関わる遺伝子であるS. mutansのSMU1442、SMU1658とStreptococcus gordoniiのSGO0110、SGO1098、SGO2026のミュータント株の作成に時間がかかり、それらの遺伝子のアミロイド形成への影響については現在検討中である。そのために、平成24年度の計画がすべて終了していない。一方、SMU482のアミロイド形成への関与など、新たな遺伝子の役割について考察できるようになってきた。よって、目的に対しては達成してきているが計画をすべて終了していないので、やや遅れていると評した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、S. mutansのSMU1442、SMU1658とStreptococcus gordoniiのSGO0110、SGO1098、SGO2026のミュータント株のアミロイド形成における親株との比較を行い、遺伝子の影響を検討していく。大きく影響のあった遺伝子については、その役割を明確にするため、それら遺伝子をコードする蛋白質を組み換え蛋白質として作成する。それら組み換えタンパク質を利用してポリクローナル抗体を作製する。組み換えタンパクシ質やポリクローナル抗体を利用して、バイオフィルム形成への影響を検討し、最終的なアミロイドのバイオフィルム形成への影響を検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
歩年度の使用研究費は、1080009円である。変異株作製、組み換えタンパク質作製、バイオフィルム形成実験、動物の飼育費および実験費ならびにポリクローナル抗体作製のための費用を消耗品として600000円使用する計画である。その他に、共同研究者との打ち合わせ、情報の収集および学会発表のため国内、国外への出張費用を旅費として350000円使用する計画でる。その他に、論文の投稿料、英文校閲、銀行振込み手数料として、130009円使用する予定である。
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